米国でのコロナ禍による解雇、特に困難に直面する中高年の女性

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全米退職者協会(AARP)の雇用統計によれば、新型コロナウイルス感染症による金融市場や労働市場の混乱のなかで、55歳以上の女性は、キャリアと収入に関して二重の脅威に直面しているという。

米国では、4月におよそ2000万人の雇用が失われ、失業率は14.7%という驚くべき水準に達した。とりわけ、55歳以上の女性の失業率は、3月から4月にかけて3.3%から15.5%に急上昇した。米労働省労働統計局が報告したデータのなかでも最大の上昇幅だ。

年齢差別と性差別につながるステレオタイプは、ひとりの被雇用者がそうした特性をあわせもっている場合に、より深刻化する。それは多くの研究で実証されているが、現在の厳しいデータは、その研究結果とも一致している。

中高年女性が深刻な影響を受けるのはなぜか?


現在の労働市場では、さまざまな要因が積み重なり、ふたつの労働者層が背負う重荷が膨らんでいる。そのふたつの層とは、「女性」と「中高年」だ。したがって、コロナ禍の厳しい雇用情勢による打撃が中高年女性の被雇用者で大きくなるのは、悲しい現実といえる。

このあとで詳しく説明するが、これはしばしば「性差別プラス」の差別(sex-plus discrimination)と呼ばれる。つまり、性差別に加えて、法で保護されている、年齢や人種などのほかの特性によっても差別されるということだ。

女性が受ける影響に関しては、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)が最近、2008年から2009年にかけての景気後退との違いを指摘している。それによれば、2008/2009年の景気後退時には、「建設や金融などの男性優位の業界が、最初に景気減速を実感した」。それに対して、現在の新型コロナウイルスによる失業危機では、真っ先に打撃を受けたのはサービス業界と、「美容室、靴店、歯科医院などの接触の多い職場であり、そうした職場は、女性のほうが男性よりも多い」という。

さらに、現在のパンデミック危機により、家族の世話をしなければならない状況が増えているが、そうした負担はおもに女性にのしかかっているとワシントン・ポスト紙は伝えている。「出勤を続けているにせよ、在宅勤務になっているにせよ、(家族の)世話をしている人にとっては、どうにもならない状況だ。すべてのことをするだけの時間はない。家族は難しい選択を迫られる。手に持ったボールをひとつだけ落とさなければならないとしたら、どれを選ぶだろう? ヘテロセクシャルのカップルでは、女性の賃金労働が選ばれる可能性が高い」と同紙は指摘している。

また、中高年の被雇用者は解雇されやすい状況にあるようだ。医療保険の費用がかかる、新型コロナウイルスに感染しやすい、技術的なスキルがないのでリモートワークをうまくこなせない、などと見られてしまうからだ。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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