伊藤詩織さん、SNS誹謗中傷で提訴。「傷とともに生きるのは私たちの世代で終わりに」

6月8日、ツイッターの投稿を巡って漫画家らを提訴した伊藤詩織さん

テラスハウスに出演していたプロレスラー木村花さんの死によって、SNSでの誹謗中傷に関心が寄せられる中、自らの性暴力被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんが法的措置へのアクションの一歩を踏み出した。

伊藤さんは6月8日、ツイッターに投稿されたイラストやコメントが名誉毀損に当たるとして、漫画家ら3人に対して慰謝料など計770万円の損害賠償や投稿削除などを求め、東京地裁に提訴した。漫画家のはすみとしこさん(ペンネーム)と、彼女のツイートをリツイートした都内在住の医師とクリエイターに責任を問う。

訴状によると、はすみさんは2017年6月から2019年12月にかけて、自身のツイッターに、伊藤さんの風貌や性暴力被害について告訴内容を題材にしたとみられるイラストを掲載し、伊藤さんを誹謗中傷する投稿。イラストに描かれた女性の名前は「山ロ(ヤマロ)沙織」や「オシリ」とされているが、訴状ではこのイラストの女性と原告である伊藤さんとを「同定することは容易に可能だ」と訴える。イラストの隣には「枕営業大失敗」や「試しに大物記者と寝てみたわ」などの文字が記されている。

はすみさんのツイッターのフォロワー数は4万3000人を超えており、社会的影響力のある投稿であることから、「拡散力、信用力が大きいこと」や「被害を拡散するリツイートや、これに賛同をする『いいね』が多数に及んでいること、加害行為を指摘されてもなお反省しておらず、原告を揶揄し続けていることも重視すべき」と訴えている。慰謝料は悪質性やフォロワーの多さ、社会的な反響を鑑みて、少なくとも1つのツイートごとに100万円、合計500万円相当に当たると主張している。

伊藤さんは、2015年4月に望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、元TBS記者の山口敬之さんに対して損害賠償を求めた民事裁判を起こし、2019年12月18日に一審で勝訴。東京地裁は山口さんに330万円の損害賠償の支払いを命じた。山口さんは東京高裁に控訴している。

その一審判決の翌日、はすみさんはこれまでに発表した前述の女性のイラストについて「計5作品の風刺画はフィクションであり、実際の人物や団体とは関係がありません。故に今回の地裁判決により作品を削除する意向は、当方にはございません」とツイートした。このツイートは5月19日現在、2517リツイートされ、6135件の「いいね」が押され、今回の提訴でも対象としている。
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文、写真=督あかり

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