緊急事態宣言が解除された日本では、段階的に緩和する動きを示す大学もあるが、大体は当面の間キャンパスを解放しないほか、インターネット上での授業を継続するようだ。ネット環境や機械の不具合、場合によっては時差などの問題が懸念される中、学生たちはそれよりも別のところに不満を訴えている。授業のクオリティだ。
筆者は2019年の9月からスペインのビジネススクールに通っている。3月中旬に授業がオンラインに切り替わった後も、変わらず毎週平均5日授業を受けている。会計学基礎やリーダーシップ、戦略的マーケティングなど、ビジネスにまつわる知識を蓄えながら修士論文の準備を進めている。
今回コロナによる外出自粛に伴い強制的に始まったオンライン授業、ポジティブな側面を押さえた上で、筆者が実際に感じたリアリティと融合しきれていないオンライン化の課題を、グローバルに友人を持つがゆえ聞こえてくる世界の学生の懸念も交えて、考察していきたい。
迅速な切り替えとインタラクティブな授業
筆者が通うビジネススクールだけでなく、ヨーロッパやアメリカ全体では、オンライン教育への切り替えが、かなり迅速だったように思える。ロックダウン予告がニュースで報道されてから、全ての教育機関がオンライン授業の準備を潔く始めた。生徒たちも納得のスピード感だっただろう。
筆者が通う学校では、授業のクオリティについて教授たちを含め驚いていることがある。それは、生徒たち次第で意外とインタラクティブな授業を実現できるということだ。ディスカッションがきちんと繰り広げられているほか、海外の大学でよく見る光景である、学生が教授の言葉を遮り発言できる積極的な授業スタイルの特徴も、見事に実現できていると感じる。
一番難しいであろうとされた、複数人でのプレゼンテーションやグループワークも多少対面以上に時間はかかるが、準備から発表まで全ての過程は成立している。筆者の体験では、WhatsApp Messengerなどのチャットアプリを用いて最低限の連絡をテキストで行い、時に応じてグーグルハングアウトを使いディスカッションをした。
例えばファストフードの戦略をテーマにしたプレゼンテーションでは、役割と準備のフローをグループチャットで書き出し分担することで、普段口頭だけで行われるやりとりが可視化された。それぞれの役割や共有事項がチャットに残るので、誰がどの作業に取り掛かっているのか、わざわざ全員に聞かなくても、手軽に確認できた。グループ通話でミーティングをした回数も、準備前と発表直前のたった2回だけだった。共有事項が可視化される便利さを体感したため、ビジネスシーンでスラックなどの社内チャットツールが活用されている理由がよくわかった。