米・仏・シンガポール・スウェーデンの「教育の今」 第二波に備えて日本は?

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日本はどうする?


最後に各国から、第二波に備える上での日本へのアドバイスを聞いてみた。

海外在住の子どもたちの方が教育機会を得られた(アメリカ、小西

オンラインとはいえ、海外在住の子どもたちの方が教育機会を得られていたのが浮き彫りになったのは、皮肉なことです。第二波の襲来も予測される中、学校を再開している間に、速やかに方策を考え、手立てを講じるべきではないでしょうか。

貧富の差が固定され、階層移動が難しい中、富裕層が「良い学区」に集中する米国の教育・社会環境を日々目の当たりにしています。通っている学校や居住エリアによって教育格差が激しく生じているのは、好ましくないと感じざるを得ません。日本国内のオンライン教育をめぐっては、一部の私立・国立に通う子どもたち、一部の自治体に住む子どもたちだけしか受けられなかった今回のケースが再び起こらないよう、十分に備えておいてほしいと思います。

話の論点をすり替えずに、正しく備える(シンガポール、中野


日本はそもそも休校決定が急で、学童などとの連動もスムーズでなかったこと、多くの自治体で休校後のオンライン授業への切り替えができなかったこと、一部の学校で親のすさまじい負担になるような時間割の配布がされたこと、など課題は山積ですよね。「また似たようなことが起こった場合、どうするのか」の計画策定はしておくべきだと思います。

オンライン授業は万能ではありませんが、9月入学の話など別の論点に話をすり替えずに、どうしたらできるだけ家庭間格差を生まずに学習機会を確保できるのか、議論が必要だと思います。

「監視機関」としての学校の機能を忘れずに(スウェーデン、久山


スウェーデンでは保育園・学校が「自宅での体罰などを早期発見し、しかるべき対処につなげること」や「家で満足に世話されていない、食事もちゃんと与えられていない子に給食を食べさせる」という重要な、監視機関として役割も担っています。

日本でも、休校になる場合はそこが一番心配です。弱者である子どもたちのために、国としてぜひそこをしっかり対策してほしいです。

「学校は、学齢が低いほど重要な環境」という現実(フランス、髙崎)


私が今回の一斉休校とオンライン授業で痛感したのは、「子どもに学習させる」ということの難しさでした。そして、何よりも、学校とは単なる「学習の場」ではなく、「教育のプロが監督した上で運営される子どもの世界」という特殊な環境だということ。

だからこそ養える自立性や社会性がありますし、それが損なわれる影響は、学齢が低いほど大きいように感じます。また学校には、働く親の保育施設、また福祉ステーションとしての側面もあります。

オンライン学習について議論する際は、教科の学習内容や年間の到達目標だけではなく、学習以外の学校の効能や、家庭学習における親の役割など、多角的な視点を持つ必要があります。日本でも今後、休校が繰り返し行われる可能性があるので、そういった総合的な議論を深めていかねばならないのではと思います。


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髙崎順子(たかさきじゅんこ)◎ライター。東京都内の教育系出版社に勤務後、2000年よりフランス在住。フランスの社会・文化を題材に、日本メディアに寄稿している。主な取材分野は子育て環境、ジェンダー、食、紀行。著書に『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)など。

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小西 一禎(こにし・かずよし)◎2017年、妻の転勤に伴い2児を連れて家族全員で渡⽶。共同通信社の同⾏休職制度を男⼦で初めて活⽤し、政治部記者を休職中。駐妻ならぬ駐夫(ちゅうおっと)と名乗り、⽇経DUALやプレジデントウーマン、ビジネスインサイダーなどで、駐夫として感じたエッセー、キャリア問題について連載。世界中の⽇本⼈駐夫約60⼈でつくるフェイスブックグループを主宰。元コロンビア大学大学院客員研究員。

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中野円佳(なかの・まどか)◎2017年よりシンガポール在住。日本経済新聞社記者などを経て、2015年より東京大学大学院教育学研究科博士課程(教育社会学)、フリージャーナリスト。著書に『「育休世代」のジレンマ~女性活用はなぜ失敗するのか?』、『上司の「いじり」が許せない』、『なぜ共働きも専業もしんどいのか~主婦がいないと回らない構造』。

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久山葉子(くやまようこ)◎2010年、理想の子育てを求め、2歳直前の娘を連れて家族3人でスウェーデンに移住。そのドキュメンタリー的著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』。2011年より高校で第二外国語としての日本語を教える。ストックホルム大学の教職課程に在籍中。社会派スウェーデンミステリを多数翻訳。

編集=石井節子

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