なぜ電力会社が花を売る? コロナ禍で生まれた「新しい連携」の形

花の販売会の様子(写真提供:九州電力)


コロナ疲れにこそ花を


そんななか、農政局を通して、九州電力とのプロジェクトの話が上がった。卒業式、入学式に使われる予定だった花たちを救おうと、急ピッチで準備が進められた。3月下旬に話が出て、4月の初めに1回目の販売会を実施するというスケジュールに合わせ、組合は大急ぎで九州内の花農家をあたり、花を取り寄せたという。


4月3日に九州電力で行われた販売会の様子(写真提供:九州電力)

こうして作られた九州産の花束500束は、イベント当日に飛ぶように売れた。想定の倍の速さで即日完売し、組合担当者も予想外だったという。

「新型コロナで困っている業種を支援したいと、普段花を買わない人が買ってくれました。花っていいよね、と言ってくださる人もいました」

九州電力の担当者も、花の力に驚かされたという。同社はフェイスブックで約14万人のフォロワーを抱えるアカウントを運営している。販売会の記事をあげると、通常の3倍以上の「いいね」が集まった。

「フェイスブックの投稿は、イベントの報告ではなく、花き業界が困っているので花を買って帰りませんかという呼びかけの意味が大きいです。今回のプロジェクトは、一方的な支援ではなく、みんなで助け合って一緒に乗り越えていきましょう、という思いでやっています」と熱意を語る。実際、投稿には「花が買いたくなりました」というコメントが多く寄せられている。

ニュースをアクションに繋げる


新型コロナウイルスがきっかけで、業界を横断した新しい連携が生まれている。

だれが何を必要としているかを知り、具体的なアクションを起こしていくツールとしてインターネットが使われる。私たちがニュースに触れたとき、ただ無力感を感じるのではなく、具体的なアクションへ結びつけられるチャンスが増えたのではないだろうか。

九州電力が取り組んでいた、社会に対してできることのリストアップは、シンプルでありながら、意外とやったことがない人が多いだろう。今回の情報収集では、新聞はもちろん、ネットニュースやユーチューブも情報源になっていた。

発信した情報が他者に影響を与え、思ってもみなかった新しい行動を生む。官民、そして個人を社会課題とつなぐ、新しいモデルになりそうだ。皆さんも身近なところから、アクションを初めてはいかがだろうか。

文=揚原安紗佳

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