電気と花、一見関わりがないこの活動がどのようにして始まったのか。九州電力と福岡県花卉農業協同組合の担当者に話を聞いた。
支援のきっかけはYouTube
九州電力では、新型コロナウイルスに影響を受ける業界を助けられないかと、「あしたプロジェクト」と題した支援活動を発足した。同プロジェクトが初めに着手したのは、若手社員を中心に、支援候補をリストアップすることだった。リストでは、支援先の候補とその課題、情報元となったサイトのURLを一覧化したという。情報源は新聞やネットニュースなど、普段から目にするものだった。完成したリストには約70にもわたる支援候補が挙がったという。
折しもそのタイミングで、九州電力職員の中である動画への注目が集まっていた。
農林水産省の有志が作成する動画群「BUZZ MAFF(ばず まふ)」に投稿された、『【BUZZMAFF】農水省から皆様へのお知らせ』という動画だ。
内容は九州農政局に属する若手職員の二人が、いたって真面目に花の窮状や効能を説明するかたわら、二人の周囲に花が増えていき、最後には画面上花だらけになるというもの。公務員が「真面目にふざけた」情報発信をする同動画は、ネット上で反響を呼び、現在では69万回以上再生されている。
この動画に共感する九州電力職員が多く、花の問題が課題リストに上がっていたこともあり、動画を作成した九州農政局へ連絡したという。
花業界は「踏んだり蹴ったり」
九州農政局を介して紹介されたのが、九州の花市場を取りまとめる福岡県花卉農業協同組合(以下、組合)だった。
組合の担当者によると、今回の新型コロナは花き業界にとって、春という花の需要のピークの時期と重なってしまったという。卒業式や入学式をはじめ、イベントが多い時期は、本来需要が上昇するはずだったのだ。
花き業界は、イベント中止で花が売れなくなる。咲いた花が余り、値崩れを起こす。仕入れの量が減る。という負のスパイラルに陥っているという。生花店をはじめ、生産者、市場ともに大打撃を受けている。市場で行われる花のせりでは価格が例年の約70%に落ちこんでいるのだ。
売れ残った花は、生産者が通販や産直所を使い、直接消費者に届けようという動きもあるが、やはり、処分されてしまうものもあるという。
組合担当者は「業界全体が踏んだり蹴ったりです」とため息を漏らす。