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現場からの医療改革


新型コロナウイルスが流行し始めた当初、通勤や通学の満員電車を介して、感染が拡大することが危惧された。ところが、これまで満員電車での集団感染は報告されていない。

一方、屋形船、カラオケ、合唱、居酒屋、相撲部屋、剣道などで集団感染が報告された。海外からも同様の報告が相次いだ。アメリカのワシントン州では2時間半の合唱リハーサルに参加した60人中、45人が感染し、2名が死亡した。前者になく、後者にあるものは大声での会話だ。唾液に含まれる新型コロナウイルスが飛び散って、周囲を感染させたのであろう。

新型コロナウイルスの感染者には無症状の人が多く、彼らも周囲に感染させる。無症状の感染者が参加すれば、周囲にうつすのは避けられない。これが集団感染の主要な原因だ。

このような事実が関係者に共有されると、前述したように唾液に関する研究が加速した。4月5日には全米アカデミーズが大統領官邸に送った手紙のなかで、新型コロナウイルスは普通に呼吸をするだけで、一面に浮遊して感染を拡大させることが報告されている。

さらに大声で話せば、感染のリスクは高まる。5月13日、アメリカ国立衛生研究所の研究者たちは、1分間大声で話せば、ウイルス粒子を含む少なくとも1000粒の飛沫が8分間空中に留まり、周囲の人に感染させると報告している。屋形船、カラオケ、合唱、居酒屋、相撲部屋、剣道などで集団感染が生じたのも宜なるかなだ。

このような研究の積み重ねの結果、マスクが再評価された。感染対策におけるマスクの効用は季節性インフルエンザを中心に知見が積み重ねられてきた。医師や看護師がN95マスクという専門家向けのマスクを使用した場合、彼らが感染するリスクは大幅に低下するが、一般人が家庭などでマスクを着用しても、家庭内感染は防げなかった。一般人がマスクを使っても効果は期待できないというのが、これまでのコンセンサスだった。

ところが、唾液で感染するとなれば、事態は変わってくる。4月3日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、従来の方針を変更し、相手との距離が十分にとれない公共の場では布製のマスクでもよいので着用することを勧めた。5月28日には中国の研究者が、マスクを着用することで家庭内での感染が79%減少したと報告し、マスクが有用であることがコンセンサスとなりつつある。

文=上 昌広

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