マネー

2015.04.16 10:00

米"既婚者向け"出会い系人気サイト「アシュレイ・マディソン」CEO独占インタビュー「離婚するぐらいなら、不倫をするべきだ」

アシュレイ・マディソン創業者兼CEOのノエル・ビーダーマン(写真中央)。

アシュレイ・マディソン創業者兼CEOのノエル・ビーダーマン(写真中央)。



"既婚者向け"でありながら、人気を博す出会い系サイト「アシュレイ・マディソン」。
創業者兼CEOのノエル・ビーダーマンに、誕生の経緯と人気の秘密について訊いた。


――アシュレイ・マディソンが生まれた経緯について教えてください。

ノエル・ビーダーマン(以下、ビーダーマン):2001 年に飛行機に乗っているときに読んだある記事がきっかけでした。「独身者向け出会い系サイトの利用者の30%以上が、"独身"ではないのでは?」という内容でした。既婚者が、独身のフリをして秘密の出会いを求めていたのです。
当時、私はスポーツ選手の代理人をしていて、顧客のプロバスケットボール選手たちがした不倫の後始末をやらされたりしていました。そこで、「既婚者向けのソーシャル・ネットワークがあれば、使いたい人もいるのでは?」と考えたのです。それが、アシュレイ・マディソンの始まりでした。
私は弁護士だったので、技術者を雇う必要があり、開設までに11カ月くらいかかりました。

――08年に突然、大ヒットした理由はどこにあるのでしょう。

ビーダーマン:いわば、「完璧な嵐」でした。つまり、景気後退も含めてさまざまな要因が重なったのです。大きく3つの理由があります。
まず1つ目は、大恐慌以来のひどい経済に陥ったこと。夫婦喧嘩のほとんどは、家計を巡って起こるものです。例えば、クビになって職場から家に帰ってきたときこそ、あなたが配偶者を最も必要としているときのはずです。
「大丈夫。きっと何とかなる」と言ってほしいのに、現実には「どうして? ほかには、誰がクビになったの? これからどうすればいいの?」と言われます。そうなると、「やっていられるか!」と思ってしまうわけです。
2つ目は、財産が分割できない、あるいは弁護士費用が捻出できない……などの事情で離婚できない人がいる点です。そうした袋小路に入った人たちは、不倫するかもしれません。世間体には結婚していても、事実上の"家庭内別居"なのです。「結婚している」と言うユーザーは多いですが、実態は疑わしいものです。その理由として、アメリカで離婚率が急上昇していることが挙げられます。それで、経済が回復基調にあることがわかりました。
3つ目は、テレビやラジオ関連の広告など、私たちが発展させようと苦労してきたパートナーシップが回りだしたからです。
この3つの要因からなる「完璧な嵐」だったと思います。あっという間に、会員数が100万人から1,500万人になりました。

――アシュレイ・マディソンを分析してください。ライバルに勝る点を一つだけ挙げるとしたら?

ビーダーマン:「男性の行動パターンを把握し、女性のためのサイトを構築した点」ですね。
ビジネスを立ち上げる前、婚外行動について調べると、男性に対するサービスが充実していることに気がつきました。実際、日本では、風俗店やホステスのいるカラオケ・スナック、ストリップ・クラブ、キャバクラなど、男性向けのはけ口がたくさんありますよね?
そこで、2つの点に気がつきました。まず、女性向けのサービスがほとんどない点。次に、社会で女性が高学歴になり、高い収入を得るようになり始めた点です。女性が、結婚についてもっと自由に考えるようになると思いました。
だから、アシュレイ・マディソンの優れている点を挙げるとすれば、「女性向けの仕組み」を作ったことですね。そして何百万人もの女性会員を集めることで、「飛んで火に入る夏の虫」のように、男性が群れをなして入会したのです。男性会員は、女性たちにアクセスするために料金を喜んで支払っています。

――ユーザーは、どんな人たちなのでしょうか。

ビーダーマン:そもそも、一晩限りの関係を求める不倫と、長く情熱と愛情を求める恋愛関係とでは、大きな違いがあります。
ただ、私はアシュレイ・マディソンを「あらゆる人が利用したくなるサイト」にしたいと考えてきました。極端な例ですが、仮にあなたが既婚の女性で、一度でいいから女性と過ごすことを夢見てきたとしましょう。あなたは異性愛者で、子供もいます。夫との性生活にも満足している。ただ、一度だけ女性と会ってみたい―。
アシュレイ・マディソンでは、そうした同性との出会いを求めて登録する女性が、何十万人もいます。私たちは、女性の恋人が欲しい人にサービスを提供していますので、このサービスには独身の女性が登録しているのです。独身の男性も、もちろん登録しています。

――もし、あなたの子供がアシュレイ・マディソンを使おうとしたらどうします?

ビーダーマン:昔、弟から「もう我慢できない。妻と別れるか、不倫するよ」と言われたことがあります。
私は、「離婚するぐらいなら、不倫をするべきだ」と言いました。なぜなら、彼にとって最も大事なのは子供たちだったからです。弟夫婦は、何万回もコミュニケーションをとり、何千回も親密なときをすごしています。そのうえでの覚悟なのです。それを止めることはできません。
だって、そうでしょう? 彼らの人生を代わりに生きることなど、誰にもできないのですから。だから、彼らや彼らの配偶者がアシュレイ・マディソンを使うのを止めることはできません。
それが、人間であることの難しさなのです。

インタビュー=フォーブス ジャパン編集部 翻訳=木村小太郎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事