ビジネス

2020.06.08 11:00

米の反人種差別デモ ファッション業界に求められる行動

ヴァージル・アブロー(Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images)

ヴァージル・アブロー(Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images)

米国で、黒人男性のジョージ・フロイドが警察に殺された事件は、世界中で抗議デモや暴動を引き起こした。これは私たち個人だけではなく、企業が行動を起こす絶好の機会だ。特に、黒人の文化を好き勝手に利用して巨利をむさぼってきたファッション業界は、責任を取るべきだ。

ファッション業界はここ数十年間、ズートスーツやストリートウエアなど、黒人文化から巨額の利益を得てきたにもかかわらず、今回の騒ぎに対しては概して沈黙している。デモに対して支持を公言している大手ブランドはマイケル・コースやナイキ、アディダスなどわずかしかなく、消費者は大手がどう動くかに関心を向けている。

真っ先に批判にさらされた企業の一つが、ルイ・ヴィトンだ。同社は、新たなハンドバックのキャンペーン立ち上げが配慮に欠いているとして批判された。同社は3日後、インスタグラムで3820万人のフォロワーに向け、「変革を起こそう。人種差別主義から自由になり、一緒に平和を実現しよう。#BlackLivesMatter(黒人の命は大切)」と表明。投稿には、同社男性向け商品部門の黒人アーティスティックディレクターで、ストリートウエア大手オフホワイト(Off-White)の創業者でもあるヴァージル・アブローが委託して制作された動画を添えた。

だがアブローはその後、自身のインスタグラムへの投稿で批判を浴びた。アブローは、デモに参加し逮捕された人の法的費用を支援する組織「フェムパワー(Fempower)」に50ドル(約5500円)を寄付したと表明。フォロワーらはすぐに、この寄付額がアブローの手掛ける服よりも安いと指摘した。さらに、推定400万ドル(約4億4000万円)超とされるアブローの保有資産額と比べれば、さらに低い額と言えるだろう。

あるツイッターユーザーは「ヴァージルは、本当にオフホワイトのキーチェーンよりも安い額を保釈金基金に寄付したのか? あきれた。みんな、彼のごみを買うのはやめよう」と記した。

ファッションの業界とインフルエンサーには、声を上げ、行動を起こす道徳上の義務がある。消費者直販コスメブランドのグロッシアー(Glossier)でさえ、人種差別と闘う団体と人種マイノリティーが所有する美容企業にそれぞれ50万ドル(約5500万円)を寄付すると発表した。

これこそが、必要な対応の仕方だ。リップサービスではなく、資金と機会を提供する必要がある。現在、大手ブランドでクリエーティブディレクターを務める黒人はアブローとバルマンのオリビエ・ルスタンの2人だけだ。(それでも、ハイファッション企業のCEOには人種マイノリティーが一人もいないことと比べると多いほうだ)

今こそ、ファッション業界は人種差別に立ち向かうべきだ。

編集=遠藤宗生

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