ファッション業界はここ数十年間、ズートスーツやストリートウエアなど、黒人文化から巨額の利益を得てきたにもかかわらず、今回の騒ぎに対しては概して沈黙している。デモに対して支持を公言している大手ブランドはマイケル・コースやナイキ、アディダスなどわずかしかなく、消費者は大手がどう動くかに関心を向けている。
真っ先に批判にさらされた企業の一つが、ルイ・ヴィトンだ。同社は、新たなハンドバックのキャンペーン立ち上げが配慮に欠いているとして批判された。同社は3日後、インスタグラムで3820万人のフォロワーに向け、「変革を起こそう。人種差別主義から自由になり、一緒に平和を実現しよう。#BlackLivesMatter(黒人の命は大切)」と表明。投稿には、同社男性向け商品部門の黒人アーティスティックディレクターで、ストリートウエア大手オフホワイト(Off-White)の創業者でもあるヴァージル・アブローが委託して制作された動画を添えた。
だがアブローはその後、自身のインスタグラムへの投稿で批判を浴びた。アブローは、デモに参加し逮捕された人の法的費用を支援する組織「フェムパワー(Fempower)」に50ドル(約5500円)を寄付したと表明。フォロワーらはすぐに、この寄付額がアブローの手掛ける服よりも安いと指摘した。さらに、推定400万ドル(約4億4000万円)超とされるアブローの保有資産額と比べれば、さらに低い額と言えるだろう。
あるツイッターユーザーは「ヴァージルは、本当にオフホワイトのキーチェーンよりも安い額を保釈金基金に寄付したのか? あきれた。みんな、彼のごみを買うのはやめよう」と記した。
ファッションの業界とインフルエンサーには、声を上げ、行動を起こす道徳上の義務がある。消費者直販コスメブランドのグロッシアー(Glossier)でさえ、人種差別と闘う団体と人種マイノリティーが所有する美容企業にそれぞれ50万ドル(約5500万円)を寄付すると発表した。
これこそが、必要な対応の仕方だ。リップサービスではなく、資金と機会を提供する必要がある。現在、大手ブランドでクリエーティブディレクターを務める黒人はアブローとバルマンのオリビエ・ルスタンの2人だけだ。(それでも、ハイファッション企業のCEOには人種マイノリティーが一人もいないことと比べると多いほうだ)
今こそ、ファッション業界は人種差別に立ち向かうべきだ。