越境4カ国座談会で見えた「教育の新しい日常」 親の覚悟がカギを握る

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「アイデアレベルを前倒しで実装できた」メリット


髙崎:高校のオンライン授業への移行はどんな風に行われたのですか?

久山:かなり急でしたね。3月17日に教育大臣が記者会見で要請したのですが、学校側もそれで初めて知らされました。それから1日で移行の準備を行ったのですが、先生方も初めてのことにみんな興奮気味でしたね。そのとき校長が言ったのは、「例年とまったく同じペースで授業を進めようとしなくていいから。できることをやりましょう!」という言葉。これに皆救われました。それに「オンライン授業にもいいところがあるはず!」ということで、それを皆で出し合ったりもしました。一番期待できるのは「出席率が上がるはず」という利点でした。コロナ以降「少しでも風邪の症状がある人は、登校しないように」ときつく言われているので、オンライン授業になる前は例年より出席率が下がっていました。

もう一つの利点は「デジタルツールなどをさらに取り入れ、授業の質を上げられるかもしれない」というものです。新しいツールを取り入れるのは時間もかかりますし、普段忙しい先生たちは「いつかやろう」と思って後回しにしていたアイディアがいくつもあったんですよね。

髙崎:自宅でのオンライン学習となると、登校学習と比べてのデメリットに目が行きがちですが、スウェーデンでは、出席率や質の向上などメリットが考えられているのが印象的ですね。もともと教育現場でデジタル活用が進んでいたから、具体的なメリットも見えていた、ということでしょうか。

今回の休校は各国、準備期間も計画性もなく突然始まってしまいました。その中でも、「学校との繋がりを切らない」「学習を継続する」という点は共通しているように感じました。ただし質や到達度までは精査できていなかったのが現実かと。次回はオンライン授業の具体的な内容についてお聞きしたいと思います。


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髙崎順子(たかさきじゅんこ)◎ライター。東京都内の教育系出版社に勤務後、2000年よりフランス在住。フランスの社会・文化を題材に、日本メディアに寄稿している。主な取材分野は子育て環境、ジェンダー、食、紀行。著書に『パリのごちそう』(主婦と生活社)、『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)など。

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小西一禎(こにし・かずよし)◎2017年、妻の転勤に伴い2児を連れて家族全員で渡⽶。共同通信社の同⾏休職制度を男⼦で初めて活⽤し、政治部記者を休職中。駐妻ならぬ駐夫(ちゅうおっと)と名乗り、⽇経DUALやプレジデントウーマン、ビジネスインサイダーなどで、駐夫として感じたエッセー、キャリア問題について連載。世界中の⽇本⼈駐夫約60⼈でつくるフェイスブックグループを主宰。元コロンビア大学大学院客員研究員。

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中野円佳(なかの・まどか)◎2017年よりシンガポール在住。日本経済新聞社記者などを経て、2015年より東京大学大学院教育学研究科博士課程(教育社会学)、フリージャーナリスト。著書に『「育休世代」のジレンマ~女性活用はなぜ失敗するのか?』、『上司の「いじり」が許せない』、『なぜ共働きも専業もしんどいのか~主婦がいないと回らない構造』。

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久山葉子(くやまようこ)◎2010年、理想の子育てを求め、2歳直前の娘を連れて家族3人でスウェーデンに移住。そのドキュメンタリー的著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』。2011年より高校で第二外国語としての日本語を教える。ストックホルム大学の教職課程に在籍中。社会派スウェーデンミステリを多数翻訳。

編集=石井節子

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