温暖化では即死しない、が盲点。コロナ感染のグレタさんも訴える「気候正義」

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高見:欧州連合(EU)の欧州委員会は、3月4日に「温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする」法案の概要を公表しましたが、その席にグレタさんも招聘されていました。国際的には野心的な目標ですが、グレタさんはEUの議員を前にして、「2050年に実質ゼロでは、危機に対して降伏したようなもの」と酷評。その会議の後もブリュッセルや、他のヨーロッパの都市の学生デモに参加しました。移動に飛行機は使わないため、その後、列車でドイツを通ってスウェーデンに帰国したのです。


欧州委員会フォン・デア・ライエン委員長と対談するグレタ(Getty Images)

そして、3月24日に「ドイツから帰ってから体調を崩したけれど、コロナに感染していたと思う」とツイッターで発信したので驚きました。検査は受けていないが、同行した父親にはっきりコロナの症状がでたそうです。自分は普通の風邪より軽かったこと、だから若い人は自分でも気がつかないうちに他人に感染させるリスクがあるので気をつけよう、とも発信していました。気候変動の活動でも「科学者の言うことをよく聞こう」と訴えていましたが、今回も「社会と連帯感をもって行動しよう。科学者と公衆衛生局の勧告に従おう」と強調し、企画していた気候のためのデモ行進を中止し、オンラインでのストライキを呼びかけたのです。

久山:気候変動の活動は、世界中でしばらくお休みという状況なのでしょうか。

高見:新型コロナのせいで、今年の秋にスコットランドで予定されていたCOP26も2021年に延期されてしまいました。今、政治家もメデイアもコロナ対策で頭がいっぱいですよね。気候変動どころではないという雰囲気も感じます。しかしロックダウンの解除が始まり、ポストコロナの社会を描くべき大事なタイミングでもあるんです。わたしの知る限りEU、スウェーデン、ドイツが、ポストコロナのあるべき社会を描き、同時に気候危機の解決も推進することを明言しており、希望をつないでいます。

久山:今回のパンデミックが、気候変動の活動においてもターニングポイントになりそうでしょうか。

高見:わたしが皮肉だなと感じたのは、2年前から気候危機の対策を求めていたグレタさんたちのような若者に対して、大人は「大きな社会変革をするのは、子どもが考えているほど簡単なことではない」と言い続けてきたことです。それがコロナ危機では、ほんの数週間で全世界が誰も予想ができなかったような変貌を遂げた。やろうと思えばできるのを、グレタさんたちにも示せたわけです。ただ今回は、経済的にも社会的にも持続可能な変革ではなかった。ポストコロナの復興には、持続可能な手段が求められます。
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文=高見幸子・久山葉子 構成=石井節子

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