黒人差別の本質は、50年前のキング牧師の「あの演説」から変わっていない

キング牧師の名スピーチ「I have a dream」から50年以上がたつが、現実は彼の夢とは遠い(Getty Images)

「われわれは、黒人が警察の言語に絶する恐ろしい残虐行為の犠牲者である限りは、決して満足することはできない」

これは1963年にアメリカの首都ワシントンD.C.で行われた演説「I have a dream」の中で語られた言葉だ。現在、1人の黒人男性の死をきっかけに全米各地で黒人差別への抗議デモが激化している。しかし、黒人差別は私たちが想像するずっと昔から、アメリカ社会に深く根付いてきた問題だ。差別撤廃に人生を捧げたキング牧師の言葉からは、今も昔も変わらない差別の現状と社会に変化をもたらそうと闘う人々の姿が見えてくる。

25万人が集まったワシントン大行進


ワシントン大行進、黒人差別、キング牧師
画像の奥に見えるワシントン記念塔のすぐ近くにはホワイトハウスもある(Getty Images)

日本では、キング牧師について歴史や英語の授業で学んだ方も多いだろう。キング牧師ことマーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、主にアメリカ南部で黒人差別に反対する運動やデモ行進を主導したことで知られる人物だ。1950年代のアメリカでは「黒人はバスの後席に乗るべきだ」という暗黙のルールをはじめ、教育、雇用、投票権など様々な場面で差別が横行していた。

キング牧師は、差別に抗議する人たちに対して平和的なデモ活動を訴え続けた。市営バスへの乗車を拒否するボイコット運動に始まる様々な運動を続け、1963年8月28日に「ワシントン大行進」で演説をするまでに至ったのだ。雇用と自由を求めたこのデモ行進には、約25万人が集まったとされ、首都で行われた最大規模の集会の1つだと言われている。デモ参加者には、黒人だけでなく様々な社会階層や肌の色をもつ人々が参加していたという。まさに、今のアメリカで起こっているような出来事が50年以上前にも行われていたのだ。

そして、このデモ行進の最後を飾ったのが、歴史に残る名演説「I have a dream(私には夢がある)」だ。キング牧師は、人種差別へ抗議する人々へどんな言葉で語りかけたのだろうか。
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文=田中舞子

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