燃料電池トラックの「ニコラ」が上場、時価総額は1.3兆円に

Nikola Corporation

燃料電池で駆動するセミトレーラーで、物流業界に革命を起こすという「ニコラ・モーター(Nikola Motor)」の夢を実現するためには数年が必要だが、アリゾナ州本拠の同社はナスダック市場への上場で巨額の資金を調達した。

ニコラ・モーターの創業者兼CEOのトレバー・ミルトンは、上場によりマルチ・ビリオネアの地位に駆け上がった。同社の株価は33.75ドルで、上場初日の6月4日の取引終了時刻を迎え、時価総額は約120億ドル(約1.3兆円)に達した。フォーブスは、ニコラの創業者のミルトンの保有資産を37億ドルと試算している。

ニコラの将来に期待を寄せるのは、投資家だけではない。「当社は世界中の大手OEMと面談を重ねている」と創業者のミルトンは話す。背景には、同社の取締役に元GM副会長のStephen Girskyが加わったことがあげられる。

ニコラは上場を行うにあたり、時間がかかるIPOを避け、既に上場済みの企業との合併を選んだ。その相手先が元GMのGirskyが設立したハイテク輸送分野の投資企業「VectoIQ」だった。合併手続きは6月2日に完了し、4日から新会社の「Nikola Corp」の株式の取り引きが始まった。

ニコラは現在、イタリアの商用車メーカー「イヴェコ」と共同でバッテリー駆動のEVトラックの開発を進め、2021年から欧州市場で発売する予定だ。さらに、ボッシュやメリトールに加え、数社の商用車に特化したメーカーと協業を行っている。

ニコラは既にアンハイザー・ブッシュが率いる企業群から、100億ドル相当のトラックの受注を受けている。現時点ではさほどの売上は生み出していないが、2021年には1億5000万ドルの売上を見込み、増産体制を整えた後に、2024年までに32億ドルの達成を目指している。

同社の開示資料には、2024年に7000台のバッテリー駆動車と5000台の水素燃料トラックを販売、もしくはリースするとの記載がある。

有害な排気ガスを出さない燃料電池車への期待は、物流業界でも高まっている。ニコラによると、水素燃料電池車は燃料補給時間が軽油やガソリン車並みに短く、重量が重いバッテリーパックを搭載する必要がないため、特に長距離トラックに適しているという。

ニコラは韓国のソーラーパネルメーカーの「ハンファ」や、ノルウェーの「ネル」などを主要パートナーに位置づけ、SF映画的な外観を持つ、セミトレーラーの量産化にも取り組んでいる。
次ページ > 「環境に優しい」姿勢をアピール

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事