テクノロジー

2020.06.07 07:00

NASAが再びロシアに「宇宙飛行士の打ち上げ」を依頼する理由

2016年10月30日、カザフスタンに着陸し、家族に電話するケイト・ルビンス(Photo by Bill Ingalls-NASA via Getty Images)

2016年10月30日、カザフスタンに着陸し、家族に電話するケイト・ルビンス(Photo by Bill Ingalls-NASA via Getty Images)

米国のNASAは長年の間、米国人宇宙飛行士の打ち上げを、ロシアの宇宙船ソユーズに頼ってきたが、先日のスペースXの「クルードラゴン」の打ち上げ成功により、その時代が完全に終了したものと思われていた。
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しかし、事態はそれほど単純ではない。NASAとロシアとの関係はしばらくの間は続いていくことになる。

NASAは6月2日、宇宙飛行士のケイト・ルビンスを国際宇宙ステーション(ISS)での6カ月の任務に向けて、今年10月14日に発射されるロケットで打ち上げると宣言した。

しかし、ルビンスが乗り込む宇宙船はクルードラゴンではなく、ロシアのカザフスタンから打ち上げられる、ソユーズMS-17宇宙船だ。
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NASAは今回の打ち上げの対価としてロシアに9000万ドル(約98億円)を支払うことになる。NASAの広報担当のStephanie Schierholzによると、この代金には打ち上げ前のトレーニングなどの一切の費用が含まれているというが、ソユーズの打ち上げ費用は、クルードラゴンの1人につき5500万ドルを大きく上回ることになる。

ただし、NASAがISSへの宇宙飛行士の送迎をロシアに頼むのは、今回が最後になる見通しだ。「米国の民間宇宙企業は2020年から2021年にかけて、打ち上げ体制を整えていく。それ以降は、ソユーズの座席を購入する必要はなくなる」とSchierholzは述べた。

8月30日には、スペースXのクルードラゴンの運用1号機となる「クルー1(Crew-1)」の打ち上げが予定されており、日本人宇宙飛行士の野口聡一とNASAの宇宙飛行士3人がISSに向かう予定だ。

しかし、クルードラゴンには7人分の座席が用意されているのに、なぜルビンスはこの打ち上げに同行できないのだろう? その疑問にSchierholzは次のように回答した。

「NASAは1回の有人飛行につき、4人分の座席を契約している。残りのスペースにはISSとの間でやりとりされる荷物が搭載される」

仮に今回のルビンスのISSへの旅が、NASAがロシアに依頼する最後の打ち上げになった場合、それ以降はロシア側がスペースXやボーイングに、打ち上げを頼むことも考えられる。

「NASAは現在、ロスコスモス側と協議を重ね、今後のソユーズの打ち上げや、宇宙ステーションにおける米国とロシアの宇宙飛行士の共同オペレーションについて話し合っている」とSchierholzは述べた。「将来的には、ロシアの宇宙飛行士がクルードラゴンや、ボーイングのスターライナーに搭乗することも考えられる」と彼は続けた。

ボーイングは現在、スターライナーの有人宇宙飛行に向けたテストを進めており、今年中に2回目の無人飛行テストを実施する予定だ。

編集=上田裕資

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