「届けたい人に届かない」日本での食料支援の壁、コロナ禍で浮き彫りに

新型コロナで社会格差は広がった。明日の食事を求め、支援を頼る人は日本でも増えている。(Shutterstock)


フードバンク不足。被災地での経験も


東日本大震災、避難所、食料
被災地支援では、福島第一原発から30km圏内の南相馬市にも食品と物資を届けた(Getty Images)

セカンド・ハーベストジャパンは、2002年に本格的な活動を始めてから様々な災害支援の現場で支援を行なっているが、その中でも東日本大震災では、約1万3000個もの食品パッケージや1億円を超える寄付で長期的な支援を実現した。また、震災発生当日に都内で炊き出しを行ったり、被災地に最初に入ったNPO団体として迅速な対応が評価されてきた。

しかし、支援の現場は私たちの考えるほど簡単ではないようだ。

地震発生から8カ月後の11月、仙台・石巻の支援物資倉庫はおよそ100トンを超える食料でパンパンだったという。被災者に配ることができずに余った食料だ。なぜこのようなことが起きるのだろうか。

「物資はたくさんあったのに、私たちは配ることができなかった。例えば、100人がいる避難所ではこちらが90人分の食料しか用意できないと、支援そのものを断られてしまう。当事者に聞けば90人分を100人で分けると言うだろうけど、(避難所の)担当者は全員に同じ量の同じ商品がなければクレームが出ると言って断るんです。おかしいと思いませんか」

つまり、全員に同じ量の同じ食材を用意できないのであれば最初から物資を受け取らないということだ。ただでさえストレスの溜まる避難所で、公平性と苦情が出ないことを意識しているのも理解できる。しかし、支援を求める人に食料が届かない現状には疑問を持たざるを得ない。また、チャールズは日本ではフードバンクの活動がまだまだ足りていないと主張する。

「東京都内で最低でも150万人が貧困層におり、その中でホームレスは約1500人です。貧困層の99.9%はホームレスではないのです。いまコロナの緊急対応として、私たちのパントリー活動では、ソーシャルディスタンスを取る必要もあり、週4回、1日につき200人ほどしか対応できません。食料に困っている人々の多くには、リーチできていないのが現状です」

フードバンク、食料支援、アメリカ
アメリカでもコロナ禍で多くの食料支援が行われている(Getty Images)

被災地での実態とチャールズの発言から、改めて支援の難しさに気付かされた。チャールズらが行なっている活動のゴールは、日本で食料支援を拡大することではなく、日本で食料に困る人がいなくなることだ。食料が命に関わる問題だからこそ、支援を必要としている最後の1人にまで届くことにこだわるのも理解できる。

食料の寄贈が減っている背景についてインタビューを進めると、法改正により支援に回ってくる食料が減少する可能性についてもわかってきた。
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文=田中舞子

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