「届けたい人に届かない」日本での食料支援の壁、コロナ禍で浮き彫りに

新型コロナで社会格差は広がった。明日の食事を求め、支援を頼る人は日本でも増えている。(Shutterstock)


新型コロナ対策が支援の壁に


このように食料支援の需要が増える一方で、活動できるボランティアを確保するのも難しくなっている。セカンドハーベスト・ジャパンではその活動の多くをボランティアが支えており、年間でのべ3万6000時間、1週間で100人から120人の方が活動している。しかし、緊急事態宣言下の活動は想像以上に大変だった。

食料を扱う支援であるだけに、とりわけ感染対策は慎重にならなければならない。受け渡し場所などでの消毒はもちろん行うが、支援相手がどんな環境で生活しているか、外出自粛要請の中でどんな行動をしているかわからない状況で、常にリスクと隣り合わせだ。

万が一感染者が出た時のためにも、支援の対象者には身分証明書の提示をお願いするようにしている。体温の計測や名簿作成などの管理は地震などの災害時には必要なかったことだ。チャールズはコロナ禍での活動について率直にこう語る。

「身分証明書がなく、本人確認できない場合は『申し訳ないけれど今日は対応できない』と言うしかありません。東日本大震災の場合は、そこまで厳しくしなくてよかった。被災地に入るときもそれほど危険はなかった。今回は、(ウイルスに対して)活動する側も常に緊張感を持っています」

営業自粛で食材が余る一方、支援に回せないもどかしさ


テーマパークの営業自粛で多くの土産物が余っていたり、休校により給食の食材が廃棄されているという報道がある。しかし、単に余っている食材を配ることを「食料支援」とは言えない。量やバランスを考えて配る必要があり、スナック類だけが大量に入ってきてもその全てを支援には回せないからだ。また、給食には多くの生鮮食品が使われており、安全に消費できる期間は限られている。食堂などで調理して食事として提供することが難しい今では、これも配るには難しい食品なのだ。

「コロナだから遊園地や給食などの一過性の余剰食材があっても、バランスよく渡せるわけではないんです。単発で(寄付を)受けても、継続性がないと量や使い道をその都度考えなくてはならない。余った食品を困窮生活者に配るという理念は簡単でも、実現はなかなか難しいです」

また、企業からの大規模な寄付もコロナの影響で減ったという。チャールズは、リモートワークへの対応や売上へのダメージなどで、企業側の社会貢献に対するプライオリティが低くなっているのではないかと支援の現状を明かす。
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文=田中舞子

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