問題の寄稿は、共和党のトム・コットン上院議員が執筆したものだ。彼はジョージ・フロイドの死を受けて全米各地で発生した略奪や暴動の鎮圧に向けて、「軍隊を送り込め」と述べ、「圧倒的な軍の存在感を示すことで騒ぎを鎮圧し、犯罪者を制圧できる」と主張した。
この文章は政治的左派やジャーナリストたちから即座に強い反発を引き起こしたほか、複数のNYTのスタッフらがツイッターで「NYTで働く黒人社員を危険にさらした」と、抗議の意思を表明した。
NYTは当初、この寄稿を擁護する立場をとり、オピニオン編集長のジェームズ・ベネットは「仮に本紙が、私のような編集者が同意する意見だけを掲載するのであれば、メディアとしての統合性や独立性が損なわれる」と述べていた。
しかし、その翌日にNYTの広報部は声明を出し、「問題の寄稿は当社の編集基準に合致しないものだった」と述べた。
「我々はこの記事の内容及び、記事が掲載されるまでのプロセスを精査した。その結果、慌ただしい編集プロセスにより、基準を満たさない寄稿が掲載されてしまったことが明確になった」と広報担当者は述べた。
今回の件を受けてNYTは今後、複数の改善策を行うとしており、そこには事実確認オペレーションの拡大や、掲載する寄稿記事の本数の削減が含まれている。
5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで武器を持たない黒人男性ジョージ・フロイドを取り押さえた白人警官のデレック・チョーヴィンは「息ができない」と悲鳴をあげるフロイドを、膝で9分近く押さえつけ、死亡させた。この事件を受けて発生した抗議活動は全米に拡大し、一部の都市では暴動や略奪に発展した。
共和党議員の多くや、トランプ大統領らは事態の鎮圧に向け、軍隊を投入すべきだと主張している。
コットン上院議員は今回、NYTに掲載した寄稿で、「軍の投入を支持する米国人が58%」とのデータを彼の主張の裏づけとして引用した。
これは、米調査会社モーニング・コンサルト(Morning Consult)が、先日公開した世論調査の結果だ。同社が、有権者登録を済ませた米国人1624人を対象にアンケート調査を行なった結果、回答者の58%が暴動鎮圧のために軍隊を投入し警察を支援することを「支持する」と回答していた。