従業員が燃え尽きやすくなる
在宅勤務が定着しないであろう理由の3つめは、私も経験から知っているのだが、在宅で仕事をしていると燃え尽き症候群に陥りやすくなることだ。新型コロナウイルスによるロックダウンが実施されるずっと前から私は、ほとんど在宅で仕事をしていた。ある米国の大企業で働いていたときでも、それは同じだった。
幸い、邪魔が入ることがほぼなかったので、私の生産性はかなり高かった。それに、急に開かれる臨時の会議に出席する必要もなかったのも確かだ。
在宅勤務の欠点は、毎日仕事を終えるべき時間がはっきりしていなかったことだ。要するに、オフィスで働いていたときよりもはるかに長い時間、仕事をしていた。
ロックダウンが続くいま、従業員の燃え尽きが深刻な問題になっているとされる。仕事を失わずに済み、在宅で仕事ができる人たちだが、いくつものストレスにさらされているのだ。
1.以前より多くの仕事を引き受けながら、同僚の解雇を目の当たりにしている。
2.家族と一緒に家に閉じこもる人が多く、何かと邪魔が入る。
3.政府やメディアが発信する情報のせいで、たくさんの人が怯えている。いずれ新型コロナウイルス危機を脱する頃には、大勢が精神的に疲れ果てているだろう。
今後も、雇用主のほとんどはおそらく、従業員がオフィスに戻って働くことを望むだろう。とはいえ、従業員を会社に呼び戻しても、オフィスは以前とは違った場所になるはずだ。開放感のあるオープンな空間や、複数の人が同じデスクやスペースを異なる時間帯に共有するホットデスキングは、テレックス(ファックスの原型)と同じ道をたどることはほぼ間違いない。健康に有害で、ウイルス拡散のリスクを高めるものとみなされるからだ。
より広いオフィスが必要になる
企業はそれよりも、オフィス空間を広げて、個室をもっと活用する必要がある。オフィスそのものを増やす場合もあるだろう。複数の場所にオフィスを置けば、新型コロナウイルスの感染者が出ても封じ込めやすいし、感染者が出ていないオフィスで業務を継続することもできる。
それはつまり、経済再開にあたっては、商業用ビルやオフィスを所有するのがいいビジネスになるという意味だ。具体的にどの企業が得をすることになるかは、まだわからない。オフィスビルの所有・運営を行う米二大企業と言えば、ヴォーネード・リアルティー・トラスト(Vornado Realty Trust)とボストン・プロパティーズ(Boston Properties)だ。