進む外出規制緩和、新しい表情を見せ始めた「観光客のいないパリ」

自転車店はメトロの利用を避ける人が集まっている。

これまでこの連載コラムでは、パリの地元の人たちが愛してやまないビストロの物語を綴ってきたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、取材もままならなくなり、しばらく執筆も中断していた。

パリは、6月2日に外出規制緩和の第2段階へと歩を進めた。多くのパリ市民がその可否を気にかけていたレストランとカフェの営業は、テラスのみ可能という決断も下された(首都圏以外では6月2日から営業再開可能になった)。

また直前の5月30日からは全国の公園が門を開き(フランスの公園は出入り口に門がある)、6月2日からは美術館、博物館もマスク着用のうえで再開した。とはいえ、いまのパリは、明らかに以前のパリとは異なる。連載を再開するにあたり、新しい表情を見せ始めたパリをレポートしてみたい。

自由を得ることで制限や禁止に意識が向かう


外出規制緩和の第1段階は、8週間にわたる外出禁止が解除された5月11日に始まった。この日を境に、携行を義務付けられていた外出申告書は必要なくなり、特例として認められていた個人で行うスポーツやペットの散歩、生活に最低限必要な買い物などのための外出も、「1日1時間、自宅から1km圏内」という制限が解かれた。

ところが、その日5月11日を過ぎても、蓋を開けてみると、目を引くほどの大きな変化はなかった。

私の自宅の近くに、小学校がある。普段なら、朝、バスルームの窓を開けると、8時20分過ぎから子供たちの声が聞こえ始め、8時半には始業のベルが鳴る。この子供たちの弾けるような声に私はいつも相当な元気をもらっており、学校がいつ再開されるかと様子をみていた。

4月28日にエドゥワール・フィリップ首相は国民議会で演説をして、5月11日以降にまず保育園、幼稚園、小学校は再開可能、ただし、登校は自由とすると明らかにした。遊び道具にしてしまう危険もあることから、子供たちにマスク着用は義務付けないが、保育園は1クラスの人数を10人以下、幼稚園と小学校は15人以下とし、医療従事者の子供、障害児を優先するとされた。

これを受けて、パリ市長を含むイル・ド・フランス地域圏(パリ首都圏)の市長ら316人が連名で、「5月11日からの学校再開は非現実的」と、エマニュエル・マクロン大統領に宛てた再開先延ばしを求める共同声明書を経済紙La Tribuneのデジタル版に寄稿した。「この日程で衛生条件を整えること、どの児童を優先的に通学させるかを選別することは無理だ」というものであった。

この訴えを考慮してか、5月7日の発表では、「衛生的な対策が万全でない学校は再開を延期しても良い」と教育大臣により告げられた。

そして、実際に自宅近くの学校が再開されたのは、5月25日の週に入ってからだった。学校だけでなく、イケアのような大規模な店舗、プランタンやギャルリー・ラファイエットといったデパートも、この週になって再オープンを果たした。しっかり、準備に時間を費やした印象を受ける。
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文・写真=川村明子

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