キャリア・教育

2020.06.05 09:00

実例から学ぶ。企業のコアカルチャーを伝える採用ブランディング

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ビジョンがあるからこそ生まれた「常識外れの選考手法」


採用広報においてはエンジニアと相性が良く、且つあまり予算がかからない手段としてWantedlyとTwitterを活用。肝心のコンテンツだが、上記に挙げたこと以外に「孤独なエンジニアの居場所」を体現している社内制度やカルチャー、進行中の新規事業のビジョンや先輩社員の入社動機などを様々な切り口から表現していった。
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また、基本的に選考の前には社内イベントに参加してもらい、企業ブランドをただ認知するだけでなく「体験」してもらうように設計。こうすることでカルチャーのミスマッチを減らしつつ、イベント内で候補者が代表に企業の質問を直接できるようにするなど、自然な流れで企業のファンになるようにデザインする場を設けた。

そして、選考フェーズでは「No内定採用」という、同社特有の選考も実施した。これは“あえて内定を出さない選考”という常識はずれにも映る取り組みだ。

一見すると採用の常識の枠を大きく外れてしまっている奇抜な選考なのだが、これは雇用の安心安全を独自のブランド価値として謳うこの企業だからこそ生まれた選考手法だ。
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「本当の雇用の安心安全とは、候補者が親や世間などの周囲の意見に流されるのでなく、“自らがキャリアを選ぶ覚悟とその企業への納得度があってこそ生まれる”」という社長の思いが元となっている。

このように、広報部分だけでなく選考手法を通じても、企業の思想を伝えることでより採用ブランドの一貫性は増し、候補者へ企業の大切な思い・カルチャーを届けることができる。

当の候補者も毎回この選考内容について説明する度に大変驚くのだが、この手段に至った背景の想いを伝えると「この企業とこの代表だからこそですね」と強く納得してくれるケースが大半を占めている。

これらのプロセスの結果として、2カ月ほど企画に充てたものの、本格的に採用をスタートしてから6カ月弱で従業員数は25名から倍の50名に。定着率も良く、現在のところ創業以来の離職者数は1名のみという好成績を収めることができた。「最近入社するメンバーは入社時点でのカルチャー理解の度合いが過去よりも非常に高い」と代表がふと漏らした瞬間もあり、採用ブランディングを適切に設計できれば企業ブランドを強く候補者へ伝えることができることを改めて再確認できた瞬間となった。


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コーポレート・アイデンティティこそが全ての土台となる


ビジョンやミッションなどの企業の根底となる思想・価値観を採用フローへ根付かせるプロセスについて事例を通して今回は解説してきた。

以前の記事でコーポレート・アイデンティティこそが企業のブランド・PRの核となることをお伝えしてきたが、この企業コアを採用領域へと転用することで、他社が真似できないその企業独自の思想やカルチャーを候補者へ自然と滲ませるように伝えることができる。

採用フローには広報だけでなく選考や内定承諾など、様々なコミュニケーションの接点が存在する。

その各接点において、その企業らしさを込めたコミュニケーションを取ることによる一貫性こそがブランディングであるため、広報の側面だけをブランディングだと捉えてしまわないように採用担当・広報担当の方は気をつけたい。

広報で伝えていることと選考で伝えられること、そしてもちろん入社してからその伝えられていたことがしっかりと体現できていること。

これらをしっかりと相手のニーズやインサイトを鑑みながら伝えていくコミュニケーション設計やデザイン感覚が、これからより多様な生き方や働き方の生まれる時代においては重要視されていくと筆者は考える。


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文=山口達也

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