実際、少なくとも12人のエコノミストが、米国経済は2020年第3四半期に、年率換算で20%以上の急激な回復を遂げると予測している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が複数のエコノミストを対象に行った調査では、この期間の年率換算成長率が30%に達するとの声も上がったほどだ。
これほどの急激な回復はまさに、トランプ大統領が再選を果たし、あと4年間、ホワイトハウスの主を務めるのに絶好の材料と言える。
現在の経済状況は最悪に見える
現時点では、トランプ政権にとってプラスになる材料などほとんど見当たらないように思えるかもしれない。毎週、数百万人規模の人が職を失っている。経済情報サイト「トレーディング・エコノミクス(Trading Economics)」の見通しでは、6月までの3カ月間で、経済は17%のマイナス成長を記録する模様だ。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる死者は増える一方だ。要するに、現在は非常に悪い状況であり、それは誰の目にも明らかだ。
しかし、有権者の投票行動は、経済の健全性に左右されるのが常だ。多くの雇用が確保され、インフレ率が低く、4年前よりも今のほうが暮らし向きが楽だとの実感があれば、有権者はおおむね、前回と同じ候補に投票する可能性が高い。
レーガンとクリントンの両大統領は、2期目の選挙で実際にそのような状況になり、どちらも再選を果たした。読者のなかには、1990年代初めに現職のジョージ・W・Hブッシュ大統領に挑んだクリントン陣営が掲げた選挙スローガンを覚えている人もいるだろう。「もちろん、重要なのは経済だ(It’s the economy stupid)」という言い回しだ。当時もこれは真実だったが、今もそれは変わらない。
ここ数週間の経済関連のデータは最悪なので、民主党の選挙対策本部は、この悲惨な経済状況が、今秋の大統領選で自らの陣営に地滑り的勝利をもたらす可能性に賭けているかもしれない。しかしそのような期待は、夏に入った途端に霧消するおそれがある。