中国の自動運転スタートアップが語る「走行試験に最適な都市」

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中国のスタートアップ企業「WeRide」はロボットタクシーの実現を目指している。同社は中国の広州と米国のシリコンバレーで自動運転車両のテストを実施し、2都市のテスト環境の違いを報告した。

WeRideによると、広州市での走行テストはシリコンバレーの30倍も効率的だという。中国の道路は車の走行の邪魔になる自転車が多く、交通規則を守らないドライバーが多いことで、シリコンバレーよりも困難な環境でテスト走行が行えると同社は述べている。

WeRideは1マイルあたりの障害物や歩行者による交通妨害、自転車による交通違反の発生頻度をベースに、今回のレポートをまとめている。

「自動車の密度に関しては、広州市もシリコンバレーも大差はない。しかし、広州市での歩行者や自転車による交通妨害の発生頻度は、シリコンバレーの4倍から5倍に達している。さらに、交通ルールを無視して走る自転車がシリコンバレーの数十倍も多い」とWeRideはレポートで述べた。

WeRideは安全な自動運転システムを開発する上で、なるべく歩行者や自転車が多い環境を選ぶことが大切だと述べている。「当社は中国で繰り返し実験を行いデータを蓄積することで、安定的な自動運転システムの開発を目指している」と同社は述べた。

今回のデータは、他の自動運転関連のスタートアップにとっても参考になりそうだ。アルファベット傘下のウェイモを筆頭に、この分野の企業の多くはフェニックスやラスベガス、シリコンバレーなどの道路状況がおだやかな都市でテストを進めている。

これらの地域は晴天が多く、道路の幅も広く、整備された道路インフラの中でテストが行える。しかし、中国の都市やサンフランシスコ、ボストン、ピッツバーグにおいてはより過酷な環境が待っている。

GM傘下の自動運転企業「クルーズ」の共同創業者でCTOのカイル・フォークトは2017年に、今回のWeRideの結論と同様な意見を述べていた。「混雑したサンフランシスコの道路での1分間のテスト走行は、郊外での1時間のテストに相当する」と彼は話していた。

しかし、ここにはもちろんリスクもある。2016年にウーバーの自動運転車両は、サンフランシスコでテスト走行中に赤信号を無視してしまい、その後の3年間、現地でテストを禁止されることになった。

また、交通量が少ない場所でも、安全なテストが実施できるとは限らない。レベル4の自動運転車が起こした史上初の死亡事故は、道幅が広く他の車が全く走っていないアリゾナ州の道路で2018年に発生したものだった。

今もなお、世界の様々な都市で自動運転のテストが進められている。本当にテストに最適な都市がどこなのかは、時間が経ってみなければ分からない。

編集=上田裕資

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