社会心理学の専門家らはこれまで、人々が抗議行動に出る理由を理解するため、広範にわたる研究を行ってきた。群衆の行動について調査し、明らかにするための研究は、少なくとも1800年代半ばには始まっていたとみられている。
こうした研究を興味深いものにするのは、人間は基本的には、現状維持とそれがもたらす安全と安心を好む傾向があるとされていることだ。つまり、それが標準となっている環境と闘うために公の場での行動に加わり、集団で”混乱”を引き起こすには、独立した個人を団結させるいくつもの要因がそろっていなければならない。
抗議行動を引き起こし、加熱させる感情的、環境的、社会的な要因には、次のようなものがある。
政府や権力者への不信感
利用されたり、嘘をつかれたりすると、人はうろたえ、怒る。そうして生まれた強く、否定的な感情は、何より大きく炎を燃え上がらせる燃料となる。
調査機関ピュー・リサーチ・センターが2019年に行った調査では、米国人の3分の2が政府を信頼していなかった。今年に入り、この数値はさらに悪化したとみられている。
不当な扱いへの怒りの共有
人間にとって何より良くない感情は、弱さや無力さを実感することだ。こうした感情は他者と共有されたとき、容易に制し難いものになり、人々を団結させる。不当な扱いを受けたことへの怒りは、行動を起こす非常に強い動機となる。
激しい感情の共有
感情が高ぶっているとき、人は良くも悪くも”通常”の状況では考えもつかないような決断を下す。残念なことだが、集団が存在する多くの状況においては、お互いに対する怒りやフラストレーションが高まる。それはやがて、集団が持つ激しい怒りになる。
地理的条件
抗議行動は多くの場合、人口密度が高い地域で起こる。自発的な集団行動は、そこにいる人が多いほど、起こりやすくなるものだ。人が多いほど、不平等を感じる可能性は高くなる。