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(左)Ubie共同代表の阿部吉倫(右)Ubie共同代表の久保恒太

平均166時間──これは医療者の1カ月の残業時間だ。一般的に“過労ライン”は月80時間と言われている中、医師の残業時間は過労死ラインの倍の数値となっている。

ただし、これはあくまで平時での数値である。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡⼤によって、医師の労働環境がさらに過酷なものになっていることは想像に難しくないだろう。実際、新型コロナウイルスの感染拡大前から、医師の時間外労働の上限規制を2024年度に適用する、といった動きもある。

そうした中、“テクノロジーで⼈々を適切な医療に案内する”をミッションに掲げ、医療現場の事務作業効率化をサポートする「AI問診Ubie」を提供するのがUbieだ。



同社は6月4日、医薬品卸を主要事業とするスズケンを引受先とし、総額約20億円の資⾦調達を実施したことを発表した。今後、スズケンが保有する連結47都道府県約240⽀店の営業メンバーとの緊密な連携によって、サービスのさらなる普及・拡⼤を推進していくという。

また、今回調達した資金は主に人材採用に充てる予定で、さらにカスタマーサクセスとマーケティングを強化していくとのこと。

医師とエンジニアが共同創業


Ubieの創業は2017年5⽉。共同代表の阿部吉倫と久保恒太は、もともと高校の同級生であったが、大学で阿部は医師の道、久保はエンジニアの道を歩む。

久保は京都大学を卒業後、東京大学大学院に進学。そこではマルチエージェントシステムを研究する研究室に在籍し、病気を予測するアルゴリズムを開発していた。

「人工知能の技術を活用して、いかに社会課題を解決するか。そこを考えていく中で、日本は医療において課題先進国で、テクノロジーの活用も進んでいない。ここにテクノロジーを浸透させることができれば、社会に大きなインパクトを残せると思ったんです」(久保)

その後、久保は医療情報専門サイト「m3.com」などを運営するエムスリーに就職し、オンラインで健康相談ができるサービスを提供する過程で、起業のアイデアを練っていった。

一方、阿部は東京大学医学部を卒業後、救急外来に勤務。実際に医療現場で働く中で、患者が最適なタイミングで受診できていない、またICTの導入やペーパーレスが進まない医療現場の課題に直面。カルテを記入するといった事務作業に追われ、患者とじっくり向き合えていない実態を痛感し、この課題を解決したいと考えるようになった。

「とある患者様が、血便を2年間も放置したばかりに、大腸がんで48歳という若さで亡くなってしまったんです。いまの医療レベルであれば早期の大腸がんの患者様を救うことは医学的には難しくありません。ただ、患者様自身に知識が無かった。最適な受診のタイミングが分からないばかりに末期がん患者として受診し、亡くなってしまった。これが自分にとって、すごく残念でならなかったんです。

一方で医療者も過酷な労働環境で働いている。働く時間のほとんどを患者さんの診療に充てているのなら良いですが、実態はカルテの記入といった事務作業に時間を割いているんです。ここは効率化の余地があるな、と感じました」(阿部)

文=初見真奈 編集=新國翔大 人物写真=小田駿一

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