病院と患者をつなぎ、適切な医療体験を。20億円調達の医療スタートアップ「Ubie」が目指すもの

(左)Ubie共同代表の阿部吉倫(右)Ubie共同代表の久保恒太


新型コロナウイルスの影響で、急遽サービスをリリース


こうした成果が出た一方で、新型コロナウイルスの感染拡大によって、新たな課題も生まれている。院内での感染を恐れ、通院を控える患者が増加。また、病院側も感染を防ぐため受け入れを減らさざるを得ない状況に陥っている。実際、病院団体が5月18日に公表した集計によると、4月時点で8割の病院で経営が悪化している、という。

そうした状況も踏まえ、UbieはAI問診Ubieのシステムを応用し、⽣活者向けのサービス「AI受診相談ユビー」を4月28日に緊急で提供を開始した。

AI受診相談ユビーは症状から適切な医療への案内をサポートするサービス。生活者は年齢・生物学的性別などの基本情報に加えて、主訴(伝えたい症状のうち最も主要なもの)を回答すると、AIが個別化した質問を出してくれる。自身の症状に合わせて20問前後に回答すると聴取が完了し、その結果をもとに、かかりつけ医など地域の医療機関や、#7119などの救急⾞対応、厚⽣労働省などの公的な電話相談窓⼝への適切な受診⾏動を⽀援してくれる。



従来は気になる症状があった場合、インターネットでの検索を通じて生活者自ら受診するか否かを決定していた。しかし、情報元の信頼性が担保できていなかったり、自覚症状を見誤ったりすることで、適切な受診行動がとれない場合もある。特に未知のウイルスの感染が広がれば、余計に不安に苛まれ、適切な行動が取りにくくなる。

「患者様の重症度と緊急度、あとは新型コロナウイルスに感染しているかどうか。そこの情報を踏まえて、患者様を適切な医療機関にマッチングさせる。このマッチングをしっかり行えれば、病院側も平時通りに診察できるはず。患者様と病院のミスマッチを最小化することも我々の重要なミッションになっています」(久保)

AI受診相談ユビーはリリースから1カ月で20万人以上の生活者に利用されるなど、コロナ禍における生活者の大事なインフラになっている。

「患者様が症状の早期に自身の病状に気づき、早期に受診ができる、そして医療の業務効率化を図り、医療全体の底上げをする。当初はこれを2年がかりでやっていけば良いと考えていたのですが、新型コロナウイルスの第二波第三波に備えるためにも、いち早く社会に実装しておかなければならない。そう思い、急ピッチで開発を進めていきました」(阿部)


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文=初見真奈 編集=新國翔大 人物写真=小田駿一

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