病院と患者をつなぎ、適切な医療体験を。20億円調達の医療スタートアップ「Ubie」が目指すもの

(左)Ubie共同代表の阿部吉倫(右)Ubie共同代表の久保恒太




病院で診療を受けようと思うと、通常はまず紙の問診票を渡される。その問診票の設問内容は通り一遍のものばかり。そのため診察で医者が詳しく痛みの具合、症状が出始めた時期などを聞いていくわけだが、これでは1人あたりの診察に時間がかかってしまう。また、診療が終わった後の時間を使って、医師は診察内容を電子カルテに打ち込まないといけない。

患者は病院の待合室で待つ時間が長くなり、医療者はどんどん働く時間が長くなる──この課題を、テクノロジーを使って解決すべく、阿部と久保が開発したのが「AI問診Ubie」だ。

医師の問診時間は1/3に減少


AI問診Ubieは医療機関の紙の問診票のかわりにタブレットを活⽤した問診サービス。医療

機関で患者はタブレットを使ってAIにより個別化された質問に回答することで、診察前の待ち時間を活⽤し、事前に詳しい症状の内容を伝えることができる。また、医師は⽂章に翻訳された問診内容と病名辞書の結果を活⽤することで、電⼦カルテに記載を⾏う事務作業が⼤幅に削減され、より患者に向き合い診察に集中できるようになる、というもの。

「約5万件の論文から抽出されたデータに基づき、AIが患者様一人ひとりの症状や地域・年齢に合わせた質問を自動で分析・生成します。患者様は受付で手渡されたタブレットから出てくる質問に沿ってタッチしていくだけです。およそ3分で入力が完了します」(久保)


2018年のサービスリリースから、約2年。AI問診Ubieは現在、41都道府県の約200の医療機関で導入されている。実際、同サービスを導入した医療機関では、初診患者の1人当たりの問診時間が約65%削減されたほか、年間の問診時間は1/3に減少。約1000時間削減する成果が出ている、といった喜びの声も出ているという。

「人間が注力すべき仕事にフォーカスできるような状態を作っていかないと、業務効率化は実現し得ないと思います。従来の医療現場では、テクノロジーに対する抵抗感のようなものがどうしてもありました。でも実は、テクノロジーが入ることで医療者に余裕が生まれ、より医療現場が人間的になっていくことができると思うんです」(阿部)
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文=初見真奈 編集=新國翔大 人物写真=小田駿一

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