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2020.06.03

LVMHのティファニー買収に黄信号、幹部が「コロナ不況」警戒

Photo by Ben Gabbe/Getty Images

LVMHは昨年11月、ティファニーを162億ドル(約1兆7600億円)で買収する基本合意を締結したが、6月2日にこの取り引きが頓挫する可能性が報じられ、ティファニーの株価は急落した。

ファッション関連メデイアWWDの報道によると、LVMHは6月2日にパリで買収についてのミーティングを開いたが、幹部らは米国市場の先行きを懸念しているという。

新型コロナウイルスのパンデミックによる経済への打撃と、ジョージ・フロイドの殺害から始まった抗議デモの米国全土への拡大を受けて、LVMHはティファニーの買収計画の見直しを行っている。

LVMHはさらに、同社に買収された後のティファニーの他社への借金の返済能力を疑問視していると報じられた。買収手続きは、当初の計画では今年の半ばには完了しているはずだった。2日のミーティングで明確な結論は出なかったが、幹部らは買収を再検討する意志を明確にしたとWWDは報じている。

ティファニーの株価はこのニュースを受けて一時的に11%急落し、9%安で当日の取り引きを終えた。

高級ジュエリーの販売を行うティファニーは6月1日に株主総会を開いたが、LVMHによる買収に関する発表は無かった。

LVMHは昨年11月、ティファニーと買収に関する合意を締結し、162億ドルを現金でティファニーに支払うとしていた。その当時、アナリストらはLVMHオーナーのベルナール・アルノーの手腕を高く評価し、LVMHが北米での存在感を高め、ジュエリー市場に進出すると考えていた。

しかし、パンデミックを受けて世界の都市で店舗の閉鎖が相次ぎ、グローバルな買収や統合が宙に浮くケースが相次いでいる。Xerox(ゼロックス)はHPを350億ドルで買収しようとしたが、その交渉を打ち切った。資金調達が困難になり、対面でのミーティングが難しくなる中で、企業のM&Aの遅延が顕著になっている。

経済状況が悪化する中で、現在も進行中のM&A案件の多くは、救済や事業再編を目的としたものなっている。

ティファニーの株価はここ1年で30%高となったが、これはLVMHによる買収成立を見込んでのものだった。仮に買収話が完全に頓挫した場合、市場の評価が一気に冷え込むことも考えられる。

編集=上田裕資

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