マネー

2020.06.04

負けないことで勝つ。パンデミック下の資産運用

トレーシー・メイトランド


「現在、当社のディフェンシブ・ポートフォリオでは、バーンダウン分析を行った企業が発行する転換社債から、4年間で年5%程度の利回りが得られます。現在の市場環境で得られるリターンとして、これは十分に満足がいくものです」とメイトランドは胸を張る。

現在、メイトランドは債務水準がきわめて低いIT企業とヘルスケア企業の転換社債を積み上げている。アドベントが自信を持って投資している企業の中には、ウェブおよびストリーミング・ビジネス向けのクラウド・インフラを販売しているマサチューセッツの企業、アカマイ・テクノロジーズやカリフォルニア州プレサントンを本拠とする人事管理ソフトウェア企業、ワークデイ、ツイッターなどがある。

アカマイはリモートワークによるトラフィックの増大がクラウド・ネットワーク・インフラの追い風になる上、債務水準がきわめて低い。「IT企業では、バランスシート上の唯一の債務が転換社債という企業も少なくありません」とメイトランドは指摘する。ワークデイは10億ドルのネットキャッシュを保有している上、昨年は30%の増収を達成しており、小規模ユーザー企業の資金繰りが悪化しても、それに耐えられる十分な資金的なクッションがある。最近の市場の下落により、メイトランドが保有する転換社債はすべて、高い転換プレミアムがついた状態にある。つまり、発行体の株価が転換社債の転換価格を大きく下回っている。

「自らのルールから逸脱せず、クレジットを評価する能力のある投資家にとって、これは絶好の投資機会です」とメイトランドは語る。


トレーシー・メイトランド◎NYブロンクス生まれ。父は外科医。1978年コロンビア大学で金融を専攻。卒業後にメリルリンチに就職。現在、保有資産が推計2.5億ドルとされるメイトランドは、ウォール街におけるオバマ前大統領の熱狂的支持者として知られる。

文=アントニー・ガラ 写真=アーロン・コトフスキー 翻訳=松永宏昭

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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