外出禁止令から3カ月、マンハッタンが「板張りの街」に

ベニア板で覆われたニューヨークのメーシーズ(Getty Images)


私の知り合いの弁護士も、本当は売りに出したかったイースト・ハンプトンの別宅に籠っていると言っていた。他にはハドソン川対岸のニューアークや、ジャージーシティへと移る人もいたようだが、遠くはフロリダやロサンゼルスへと「脱出」した人も多い。

また、スマートフォンの位置情報によれば、3月1日から5月1日までに、市の人口の約5%に当たる42万人がニューヨークを離れたとのことだ。そういえば、4月は、いったいどこに人は行ったのかと思うくらいマンハッタンは閑散としていた。

飲食・レジャー関連の見通し厳しく


既に昨年、外国人留学生のビザ取得条件を厳格化したため、ニューヨークの人の流れは減少傾向にあった。加えて、いまでは通常の旅行客の姿も見られない。オフィイス街ももちろん休止しているし、ブロードウェイ近くのレストランも、劇場が軒並み9月6日まで休止となっているため、辛うじてテイクアウトで凌いでいたレストランも「そもそも近くに住んでいる人の姿がないので、オーダーが来ない」とサービスを打ち切ってしまったところもある。



とはいうものの、5月末から少しずつニューヨーク市も経済は再開してきている。車の通行量も徐々に増えてきて、航空会社の輸送顧客数も戻ってきているため、空港行きの交通も混雑が出始めている。レストランも再開してきているが、テイクアウトだけで、経済再開後の稼働率50%まで戻ればいいほうだとの声も聞く。

そのため私の顧客であるレストランも、再開後の再雇用も含めてこれまでの半数の従業員で回そうとしている。昨年末までに法律で最低賃金が上がっていたこともあり、雇用する側にしてみると、再開に向けて人件費が膨れ上がらないように慎重に調整して行きたいというのが本音だ。

経済再開後、過去9週間で3860万件にものぼった失業申請数のうち、もっとも打撃を受けている旅行、レジャー、エンタテインメントの業界で、どの程度の人が再び元の職場に戻れるか、あるいは新たな職を得ていくのか、そのペースは予想がつかない。 

4月には全米で住宅ローンの400万件が支払いを見送った。日本の首都圏と同じように、ニューヨーク市の中心より周辺の住宅価格が上がってきている。リーマンショックの後とは逆の現象である。都市を離れてよりよい住環境へ移りたいという、テレワーク社会を見越した変化が現れてきている。

オフィスにも、エレベーターには1人ずつと制限が付くため、7月半ばまでに25%の人が戻り、次に50%戻りということで、徐々にリモートから戻していくようだ。

ニューヨークに移り住んで30年近く、今年は初めて体験するこのメガシティの夏になりそうだ。

文=高橋愛一郎 写真=Getty Images

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