外出禁止令から3カ月、マンハッタンが「板張りの街」に

ベニア板で覆われたニューヨークのメーシーズ(Getty Images)


デモ以外の街の変化といえば、ついに小売店でも事前予約が必要になった。以前は店頭で距離を空けて並んでいれば順番に入店できたコンピュータストアでは、いまは店頭のQRコードをスキャンして、来店時間を予約してから再度来るようにと言われた。銀行のTD BANKは、顧客はすぐには店内には入れず、1レーンに人が並んでいる。私も一度行ったときには、1時間待たされた。

外出禁止令中も好調だったのはスターバックスだろうか。事前にアプリでオーダーしておけば、待たずに受け取ることができた。一方で、全米でチェーン展開しているカフェ&パンのパネラ・ブレッドは、アプリでオーダーするテイクアウトはあったが、ドライブスルーの設備までは各店が備えていなかったことで、大きな痛手を負っているという。

またスーパーなども店内では、レジの前にアクリル板や透明のシートで仕切りをつくり、客との間で飛沫が飛ばないようにしてある。そのためアクリル板の流通在庫が逼迫しているとのことだ。

ニューヨークのバスも、いまは運転席の後部にX字のチェーンが張ってあり、運転手には近づけないようになっている。今回のコロナ禍では、バスのドライバーをはじめとして公共交通機関の運転手などが50名以上も亡くなられた。最前線での必要不可欠な職種として運行を続けていたため、多くの犠牲者が出たようだ。



ニューヨークの地下鉄は24時間動いているのが普通だったが、いまは深夜午前1時から5時まで運行を止めて、消毒作業をしている。また、紫外線UV-Cを使って地下鉄、バスの車内の新型コロナウィルスを無力化することも試すそうだ。

ニューヨーク・タイムズによると、郵便局への転送依頼の届け出が3月に5万6000件、4月に8万1000件以上あり、これはそれぞれ昨年の同月の倍に当たる数字であり、そのうちの約60%がニューヨーク外への転送依頼であったという。これは、セントラルパークを東西に挟むエリアからダウンタウンまでの住民の40%以上が、一時的にせよマンハッタンから出てしまったからだと言われている。

特にアッパーイーストやアッパーウエストに住む富裕層からの転送依頼が多かったともいう。まるでひと足早いサマーバケーションのように、彼らは別荘のあるロングアイランドのハンプトンやウッドストックなどへと移動したのだ。
次ページ > 42万人がニューヨークを離れた

文=高橋愛一郎 写真=Getty Images

ForbesBrandVoice

人気記事