ライフスタイル

2020.06.06 11:00

外出禁止令から3カ月、マンハッタンが「板張りの街」に

ベニア板で覆われたニューヨークのメーシーズ(Getty Images)

ベニア板で覆われたニューヨークのメーシーズ(Getty Images)

日本では緊急事態宣言が全国的に解除されたが、すでに外出禁止令から75日余りが経過しているニューヨークでも、6月8日からは経済再開のフェーズ1に入り、製造業や建築業など人との接触が少ない業種から徐々に再開されている。

しかし、その直前、ミネソタ州ミネアポリスで起こった警官によるジョージ・フロイド氏の殺人事件をきっかけに、ニューヨークでも抗議デモが巻き起こり、ソーシャル・ディスタンスもマスクの着用も、まったく吹き飛んでしまっている。

新型コロナウイルスの第2波を心配する声もあがっているが、さらに抗議デモは一部では暴動化しており、略奪行為なども誘発している。経済活動の第一波を開始しようとしていたニューヨークは、もうひとつの災厄に見舞われてしまった。

コロナ後に露呈した「アメリカらしさ」


私は以前、ミッドタウンのメイシーズ脇にオフィスを持っていたが、その本店も略奪にあい、ソーホーのシャネルなどの高級店も、軒並み略奪の被害にあった。日頃通い慣れた5番街の中心地、42丁目近辺でもザラやザ・ノース・フェイスなどのお店が破壊され、5番街のセントラルパークから南へ下る、普段は賑わいを見せる通りも昼間から人通りが少なく、「板張りの街」と化している。

店側としては、営業再開を目指している最中に、今度は店を破壊されて踏んだり蹴ったりの状況だ。まるでハリケーン接近前のように、小売店やレストランも通りに面したガラスを厚いベニヤのボードで覆う作業をしている。私の顧客であるレストランもガラスを割られたり、侵入されていて、セキュリティシステムのチェックのため複数人で、現場を見に行ったりしている。



人種差別問題は1607年にジェームズタウンに植民地が築かれた頃から、アメリカのDNAに刻み込まれてしまっている。簡単に拭えるような表層的な問題ではなく、アメリカの根幹に根深く人種差別問題は燻っている。

コロナ禍による経済的困窮など、労働人口の4分の1が失業申請しているなかで、再びその導火線に火が付き、ふつふつとマグマが爆発し、強い抗議行動となって再び顕在化している。それでもこの騒ぎで銃の製造や販売をする会社の株が上がるところがアメリカらしい。6月になり気温も上がってきているが、低所得者層の住むエリアを通ったときに、デリの店員が防弾チョッキを昼間から着ている姿も見掛けた。
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文=高橋愛一郎 写真=Getty Images

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