流行の予防、金融サービス。ブロックチェーン先進国・中国で生まれた、DXの先進事例

本寄稿における前編で、コロナウイルスの影響によりフィジカルに空間を共有できない今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の機運が高まりを見せていること、そして、一筋縄では上手くいかないDXの実現に際して、デジタルな信頼基盤としてブロックチェーン技術が力を発揮することを説明いたしました。

ブロックチェーンが鍵となることは国際的な合意となりつつあります。例えば、世界経済フォーラムは、ブロックチェーンが第四次産業革命の支柱となるとして、その理念を掲げたブロックチェーン原則を発表し、サプライチェーンに重点を置いた「Redesigning Trust:Blockchain Deployment Toolkit」というパンフレットを作成しました。

後編となる本記事では、コロナウイルス流行後の世界において、ブロックチェーン技術がどのように利用しうるのかについて、実際の事例を交えながら紹介していきたいと思います。

流行の予防と制御


コロナウイルスについて未だワクチンや特効薬が開発されていない以上、目下重要な問題はいかにして流行を未然に防ぎ、感染拡大を制御するかにあります。 

これには、民間事業者や官公庁、個人から情報を集約し統合的に分析するためのデータプラットフォームが必要です。一方で、こうしたデータ共有は公共の利益に資するために行うものですから、単一事業者や単独自治体による集中管理ではなく、分散的かつフラットに接続できる情報基盤が求められます。

COVID-19の最初の感染拡大が観測された中国は、近年最もブロックチェーンの活用に積極性を見せる「ブロックチェーン先進国」であり、実際にこの感染症対策のためにブロックチェーンを用いた試みが多数実施されています。

中国企業「迅雷(Xunlei)」を初めとするコンソーシアムは、流行の予防と制御のためにデータ共有を行うためのネットワークを立ち上げ、政府が流行の予防・抑制を行うために必要なデータを提供しはじめました。

MOAC財団と北京ビジョンデータ技術有限公司も「疫病予防と制御のためのビッグデータプラットフォーム」を開発。伝染病監視と正確な政策実施のための強力な科学的・データベースの支援を開始しました。現在は河北省、広東省、北京市、湖北省、江西省などに展開されているようです。

感染症を社会のコントロール下に置くための情報基盤として、効果的なアプローチといえるでしょう。
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文=森川夢佑斗

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