流行の予防、金融サービス。ブロックチェーン先進国・中国で生まれた、DXの先進事例




医療情報の効率的な共有


医療分野は米国においてブロックチェーン活用の最有力なユースケースとして長らく議論・研究が重ねられている分野でもあります。

例えば、院内感染を防ぐために取り組まれている遠隔診療や宅配調剤を実現するためには、カルテの共有が問題となります。また、遠隔診療であれば医療リソースに余裕のある地域から枯渇した地域への支援も可能になります。

しかし、患者の診療履歴という極めて重要な個人情報を特定の管理者に委ねるのは問題の温床になりかねません。そこでユーザー自身がカルテ情報を暗号化し、適宜任意の医療機関に開示できる情報銀行としてのブロックチェーン活用が検討されています。

医薬品のサプライチェーン


また、医療・製薬のキャパシティが限界を迎えはじめると、医薬品サプライチェーン上でも問題が生じます。どの生産拠点にどの程度の薬品があるのか、マスクや消毒液の在庫が全体最適に配分されているか、といった情報を可視化するためにブロックチェーンのトレーサビリティを活用することが可能です。

事態が深刻化すれば、モラルハザードやずさんな管理によって医薬品の紛失・盗難等が生じるリスクも生じます。

現在、医薬品の温度管理や食料品の品質管理のために行われているサプライチェーン関連のユースケースは、コロナ下における医療資源の最適化のために活用されるでしょう。

窓口業務やバックオフィス業務のデジタル化


医療現場に限らず身近なユースケースは、最近特に問題視されはじめた「はんこ出社」への対策として、押印や契約プロセスを電子化する際にも効果を発揮します。

個人や組織の電子署名によってデータ基盤上に真正な記録を残せるブロックチェーンを用いることで、物理的な媒体を用いてきた取引プロセスと同等の確からしさを保ったまま、電子化が可能だからです。



現在は現場の努力によって辛うじて維持されている公的機関の窓口業務や選挙時の投票なども、本人確認を絡めたブロックチェーン基盤と電子署名技術を活用することでデジタルに完結させることが可能です。

このように、「フィジカルな空間を誰かと共有すること」や「紙や印鑑のような物理的なデバイスを用いること」によって、信頼を補強していたプロセスを電子化するために、ブロックチェーン技術のユースケースが一気に拡大することとなります。
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文=森川夢佑斗

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