日本人への緊急提言! コロナ危機で変わる世界経済

金融危機・マクロ経済政策などを専門とする世界的な経済学者で、米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)所長のアダム・ポーゼン氏。首都ワシントン在住で親日家でもある同氏に、ニューヨークから電話インタビューを行った。


──あなたは今年4月、米CNBCに出演し、コロナ危機と他の危機を比べ、「最も重要な違いは、今回の危機が実体経済から始まったことだ」と話しています。

通常、深刻な経済的危機・低迷は金融セクターから生じる。例えばインフレでは、中央銀行の利上げで投資や消費が冷え込み、経済が落ち込むといった具合だ。日本が1989~92年に、米国が2008~10年に経験した金融資産価値の暴落もそうだ。価値の下落に加え、銀行システムに問題が生じるなど、金融の不安定化が起こった。

今回のように、金融に問題がないのに先進国の経済が停止するような例は聞いたことがない。1890年代の不況でも1970年代のインフレでも、人々が恐怖に陥り、資金を引き揚げたが、いずれ危機は収まった。1930年代に中西部オクラホマ州などで起こった「ダストボウル(砂塵嵐)」のときも、そうだ。第二次世界大戦から戻ってきた人々のための雇用が必要になったときも、経済は、うまく対応できた。

だが、今回は違う。問題は、人々が感染への恐怖心や政府の規制により、消費や投資をしないことだ。ここが、他の経済ショックとまったく違う点だ。

──グローバル化が裏目に出て、世界経済に連鎖的影響が及んでいるのでしょうか。

答えはイエスでもあり、ノーでもある。サプライチェーンの遮断と国家間の不信感が医療機器や食料などの物流を妨げたのは明らかだ。とはいえ、全生産を国内でまかなおうとする国々は、いずれ苦境に陥る。

特定の種類のサプライチェーン再検討や複数の供給源の確保は必要かもしれないが、すべてを国内で済ませようとしたところで、自分たちの身を守れるわけではない。インフルエンザのパンデミック、俗にいうスペイン風邪が流行した1918年当時は旅客機など普及していなかったが、世界的に蔓延した。グローバル化以前の世界も、まったく安全だったわけではない。

──米欧では戦略物資の規制強化が起こっています。「米国第一主義」という経済国家主義の背景は?

生活必需品のひっ迫や経済国家主義の台頭は、恐怖心とイデオロギーが原因だ。トランプ大統領がコロナ危機を理由に移民の受け入れを棚上げにしているのは、イデオロギー的に現況を利用したいからだ。国民の健康や雇用を守るためでは断じてない。そもそも今は、旅行者もほとんどおらず、出稼ぎ労働者の仕事も皆無に近い。
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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ポール・ライディン

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