南米では、2020年2月に最初の感染者が確認されて以来、感染者数は着実に増加している。アフリカには、今回のパンデミックにともなう独自の問題がある。だが、この2大陸の人口の多さを考えれば、両地域の状況をもっと詳しく検証するべきだろう。
南米
世界保健機関(WHO)は5月22日、南米がコロナウイルスの「感染の新たな中心地」になっており、とりわけ、確認された感染者数が50万人超となったブラジルがもっとも影響を受けていると発表した。とはいえ、南米全体がきわめて大きな危険にさらされている。
南米大陸の人口は4億人を超える。医療サービスは能力の限界に達しつつあり、人手と装備の不足が深刻な問題になる可能性がある。ブラジル・サンパウロの病院は収容能力の90%に達していると報じられている。また、奥地に住む先住民は、医療リソースにアクセスできないことから、さらに危険が高まる。
ほかの地域と同様に南米諸国も、経済活動の維持とウイルス拡散の抑制とのあいだで難しい舵取りを迫られている。この舵取りをさらに難しくしているのが、最近の石油市場の崩壊だ。石油産業に依存している南米諸国に大きな影響が広がっており、同地域の経済がすでに脆弱だったことを考えれば、ウイルスと石油価格崩壊のダブルパンチに見舞われた南米諸国は、財政面で深刻な影響を受けるだろうと専門家らは予想している。南米地域の政治的リーダーたちは今後、難しい課題に直面することになりそうだ。
アフリカ
アフリカに対する新型コロナウイルスの影響は、読み解くのが難しい。最近のリポートによれば、アフリカ大陸では、その人口の多さを考えると2億5000万人が新型コロナウイルスに感染する可能性があるという。だが、ウイルスの拡散と影響は、人口が密集したほかの地域に比べれば緩やかだ。その一因は、アフリカ諸国の政治的リーダーの多くが早期に外出制限措置をとり、迅速に国境閉鎖に踏み切ったことにあるのかもしれない。
また、アフリカの全人口12億5000万人のうち、60%は25歳未満であり、現在の状況は世界でもっとも若い人口構成であることに起因している可能性もある。高齢者ほど感染リスクが高いことを考えれば、アフリカの人口構成は、アフリカ大陸での感染拡大を抑制する重要な要素のひとつになっているのかもしれない。
とはいえ、やはり警戒は必要だ。医療などの深刻な対応力不足に直面しているという点では、アフリカは、世界のほかの地域に劣らず危険な状態にある。さらにアフリカは、奥地の人口が多いほか、世界の難民人口のうち26%を超える人たちが暮らしている。どちらのグループも、定期的な健康チェックはもちろん、検査や治療をすぐに受けられない可能性があり、高い死亡リスクにさらされている。
人口の多さ、経済的な懸念、差し迫った医療能力不足を考えれば、アフリカも南米も、今後数カ月は警戒を続ける必要がある。実際、世界中で感染拡大が続けば、どちらの地域も結局は、このおそろしいパンデミックの影響から国民を守るために難しい決断を迫られることになるだろう。