事件で死亡したのはジョージ・フロイド氏。同氏は白人警官に圧迫されている間「I can’t breathe(息ができない)」と訴え続け、助けを求めた。この一部始終を捉えた動画は、ソーシャルメディアで拡散された。
今回に限らず、これまでの白人警官による度重なる黒人への不祥事に、人々は怒りを抑えきれない。大規模な抗議集会はニューヨーク市でも行われ、日に日に過激さが増している。「BlackLivesMatter」「I can’t breathe」など、さまざまなメッセージが書かれたプラカードを持った人々が街を行進して黒人差別を訴えているのだ。
しかし、昼間の抗議から一転、プロテスター(抗議参加者)は夜になると暴徒と化す。2日目の抗議集会では、警察車両に火炎瓶を投げ込んだ殺人未遂も含め、約200人が拘束された。3日目は過激さを増し、約350人拘束。ユニオンスクエアにプロテスターが集結し、ゴミ箱が燃やされ、警察車両が次々と放火され、洋服店や家電店では、窓が割られ商品が強奪された。警察官とプロテスターの衝突は、深夜過ぎまで続いた。
4日目の本日の午後5時現在。公式には抗議が行われる予定はないはずだが、マンハッタンのブライアントパーク付近で抗議集会が自然発生している。
(筆者友人撮影)
「やはり」と「どうしてここまで」複雑な想い
私は朝のニュースで目にした暴徒と化したプロテスターの姿に、なぜか心が苦しくなった。私もニューヨークに住む有色人種だ。また、黒人系やアジア系の知り合いも多く、平時から「人種差別」は身近な話題だった。
そのため、今回の抗議のニュースを見て、「やはり」という想いと「どうしてそこまで」という複雑な想いになった。
新型コロナウイルスを乗り越えるため、ニューヨークはここ3カ月間ひとつになって取り組んでいる、そんな風に思える映像が連日ニュースで報道されていた。毎日夜7時にはエッセンシャルワーカーを応援するための拍手で街が包まれ、道路やお店の壁などいたるところにサンキューメッセージが掲示され、毎日行われているクオモ州知事による会見では「ニューヨーカーが一丸となり協力してきた結果が出てきた」という労いのメッセージもあった。