日本発のコミュニケーションアプリ 「UDトーク」はテレワークの標準になるか?

コミュニケーション支援アプリ「UDトーク」。スマートフォンに向かって話しかけた音声がリアルタイムに文字化され、多言語翻訳にも対応する。


目標は誰もが使いやすいコミュニケーションアプリ


今回筆者はUDトークの開発者であり、Shamrock Recordsの代表取締役を務める青木秀仁氏にビデオインタビューを申し込んだ。青木氏には今UDトークが注目を集めている背景のことや、モバイル端末を活用した人と人によるコミュニケーションに関するこれからの展望を聞くことができた。


UDトークを開発するShamrock Records 代表取締役の青木秀仁氏

青木氏がUDトークの開発を始めたきっかけは当時、聴覚障がい者の方から音声認識で会話を文字化できるアプリが欲しいという提案を受けたことだった。その後、青木氏自身がスマホやタブレットなどデジタルデバイスを活用したコミュニケーション支援に興味を抱き、深く傾倒してきた。UDトークには次々に独創的なアイデアが盛り込まれ、程なくして脚光を浴びることになる。

デジタルデバイスやソフトウェアを、誰もが快適に使えるようにテクノロジーへの「アクセシビリティ(近づきやすさ・親しみやすさ)」を高めようとする意識がいま世界的に高まっている。たとえばiPhoneやiPadのOSに搭載されている「アクセシビリティ」も、視覚に聴覚、身体機能に障がいを持つ方々がアップルのデバイスを不自由なく使うために欠かせない機能として話題を集めている。


青森県立青森聾学校ではコロナウィルス感染拡大防止対策で臨時休業中のあいだに、コミュニケーションアプリとUDトークを組み合わせて学生へのリモート情報発信を行った(画像資料はUDトークアプリのサイトより引用)

UDトークはiOSデバイスと親和性の高いアプリなのだと青木氏が説いている。日本国内には特にiPhoneのユーザーが多くいると言われる。iPhoneによるハード・ソフトのユーザーインターフェース、ユーザー体験には機種を超えた多くの共通点があるため、使い慣れたユーザーが持てる知識を初心者に伝えやすい所に特徴がある。

青木氏はまたエンジニアとして自身の経験も踏まえながら、「iOSアプリの開発環境はバージョンを超えた高い互換性を確保しているためツールがとても使いやすく、エンジニアがソフトウェア開発に集中してイメージに近いものが作れる所に大きなアドバンテージがある」と述べている。

青木氏は障がい者をはじめ、あらゆる形でコミュニケーションのサポートを必要とする人々の声に耳を傾け、近くに寄り添いながら発見したこともUDトークのアクセシビリティを高めるための肥やしにしてきた。

2018年には米アップルが年次イベントとして開催する開発者向け会議「WWDC(Worldwide Developers Conference)」にも足を運んだ。青木氏はアクセシビリティに関連するテクノロジーが最も成熟するアメリカの経験値に触れ、多くの収穫を得たと振り返る。

「WWDCに参加した際、聴覚に障がいを持つ参加者のため、デジタルテクノロジーにも深く精通した手話通訳の方が専属で付いて、手厚いサポートを提供していたことが印象に残っています。手話通訳の方々も純粋にアップルのイノベーションに興味を持ち、熱気あふれるイベントを共に楽しんでいる様子でした。会場の運営にはアップルのアクセシビリティの開発チームが参加者と近い距離で関わり、一体になってオープンな雰囲気を作り出していました」

このWWDC訪問が青木氏にとって初めての訪米機会だったこともあり、行く先ではアクセシビリティのテクノロジー導入に取り組む施設等を訪れたり、一般の人々の生の声にも数多く触れてきたという。さらにWWDCに参加したことで、アプリの開発に関わる世界各国のデベロッパーと横のつながりを持てたことが、コミュニケーションアプリを開発する際に求められる「文化的バックグラウンドへの意識」を高める上でも、大事な糧になったそうだ。
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文=山本敦

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