だが、そうした措置を取っていることは、必ずしもスウェーデン国内のビジネスが「通常どおり」であることを意味しているわけではない。混雑したレストランや、大勢で賑わう晴れた日の公園の写真などを目にした人も多いかもしれないが、実際にはパンデミック(世界的流行)は、多くの国民の生活に大きな影響を及ぼしている。
なかでも打撃を受けているのが、ホスピタリティ業界だ。たとえば、ヴェストラ・イェータランド県のリードヒェーピングにあるホテルは、例年この時期は客室の大半が宿泊予約で埋まり、レストランも多くの客で込み合う。だが、今年は3月に入り、パンデミックの影響で目に見えて予約が減少した。
「スタッドホテル・リードヒェーピング」のマネージャー、イェスパー・アルフレッドソンによれば、宿泊、レストラン、会議の予約がすべて大幅に減少。前年の同じ時期と比べ、最大およそ70%減ったという。
この前例のない状況を受け、アルフレッドソンは従業員らと協議。どうすれば安全にホテルを利用してもらえるか検討した。そのなかで、ある従業員が発案したのが、ホテル内に「ポップアップ・レストラン」をつくることだった。
キャンペーンを即開始
「ポップアップ・レストラン」のコンセプトは、客室をレストランの個室のように利用してもらうというものだ。宿泊予約はほとんど入っていなかったことから、アルフレッドソンはすぐにもプロモーションを開始することを決定。同月中旬から、「67ポップアップ・レストラン」と名付けた新サービスを導入した(名称は、同ホテルの客室数に由来している)。
現在のところ、スウェーデン国内では客室をリモートワークのためのスペースとして提供するサービスはあるものの、レストランの個室代わりとして提供している例は、他にはないという。