アマン京都 神々の庭で遊ぶ刻


新しいKYOTOのもてなし

京都はここ数年、外資系ラグジュアリーホテルの進出ラッシュを迎えている。各ホテル、自らのアイデンティティと京都らしさの表現に心を砕いているが、アマン京都はどうなのだろう。

「アマン京都が京都らしさを声高に強調することはありません。我々が提供したいのは京都観光のみならず、アマン京都でしか体験できないエクスペリエンス。木々を渡る風、鷹峯山系から湧き出る水のきらめき、鳥の声……アマンが大切にしている精神であるJourney to Peaceを存分に味わっていただけるリゾートだと自負しています」と、語るのはアマン京都の総支配人である塩田明氏。

11月のオープン以来、約7割の利用がインバウンドであり、そのゲストの多くがリゾート内での時間をゆったりと楽しんでいるという。もっとも、広大な敷地を散策し、ヨガやスパなどアマンらしいアクティヴィティを積極的に楽しんでいたら、数日があっという間に過ぎてしまいそうではあるけれど。


アマン京都総支配人の塩田明氏。大阪の外資系ホテルでキャリアをスタートさせ、ロンドンや大連など海外勤務を経験後、08年~17年東京、大阪、京都の外資系ラグジュアリーホテルの料飲部長を歴任。19年2月より現職。

一方で、京都らしさを大いに取り入れているのが、アマン京都での食体験だ。総料理長の鳥居健太郎氏は京都や周辺地域の食材をふんだんに取り入れ、16 年以上におよぶ海外滞在経験から、洗練されたアマン京都独自のキュイジーヌを編み出した。

冬には牡丹鍋、春には新筍など、この地でしか味わえない食材をイノベーティブな料理に昇華して供するディナーのほか、重箱に和菓子に見立てたセイボリー、スイーツを詰めたアフタヌーンティーや、朝食の湯豆腐ワゴンサービスなど、そのラインナップは心弾む内容。

中央に暖炉を配し、テラスから庭を望むオールデイダイニング「ザ・リビングパビリオン by アマン」では、ゲストとスタッフが和やかに談笑していた姿が印象的だった。


夜ともなれば幻想的な灯りに照らされるテラスからザ・リビングパビリオン by アマン(ダイニング棟)を眺める


室内、テラスともに中央には暖炉が置かれ、炎を眺めながらゲストの会話が弾む

非日常へ誘われる宿泊体験

ここで、実際に宿泊する客室へと目を移してみよう。アマン京都の客室数は24室のスイートと2室のパビリオン(ヴィラ)。そのどれもが一面の窓から庭や森を見渡し、または遠景に比叡山などの山々を望み、自然の中でゆったりとした非日常を楽しむことができる。

それぞれの客室には床の間が設えられており、寝室は畳敷き。パビリオンの壁には久住有生氏による左官アートワーク、さまざまな作家による陶磁器も配され、ここが日本であること、京都であることを実感できる落ち着いた空間が造られている。

檜製の深いバスタブに湯をため、肩まで身体を沈め、しばし目を閉じていたら、外で鳥が「ホーホー」と啼いた。フクロウ? 窓の外に目を凝らしたが、そこは木々の影しか見えない闇だった。

日本、それも京都にあって、昏い夜がいまいかに贅沢な存在か、世界を旅してきたアマンユーザーなら理解いただけるだろう。画一的だった京都への旅の様を一転させたアマン京都、その今後に注目したい。

THE PAVILION


アマン京都の中でも最大の広さを誇る客室「鷲ヶ峯パビリオン」のリビングルーム。壁一面の広々とした窓から遠くに比叡山を望める。


ベッドルームは畳敷きで広々とした造り


バスルームには外国人ゲストにわかりやすい入浴ガイドとともに柚子の香り高いバスサッシェがそっと置かれていた

THE DINING


鳥居健太郎総料理長による、ローカルな食材を大いに取り入れた料理が好評。ランチ、そしてモダンな重箱に和菓子に見立てたスイーツ、セイボリーを詰めたアフタヌーンティーはビジターも味わうことができる。


テラスで暖炉を囲んでアペリティフを


本格的な日本料理を味わうことができる「鷹庵」


アマン京都
www.aman.com/

photographs by Katsuto Takashima, T-MAX(THE PAVILION, THE DINING, アマン京都) | text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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