甲子園は中止、プロ野球は再開へ。スポーツ危機にこそ新しい観戦方法を

昨夏の阪神甲子園球場。今年は春夏ともに甲子園大会は中止となった (Shutterstock)


商用導入にもっとも大きな障壁となってきた「LIVE観戦を上回ることができるのか」という懸念は、昨年のラグビーW杯のように、「超」で表現される人気コンテンツであれば、ライブビューイングなどのオルタナティブ、新体感イベントは十分に商用に耐えうると実証されている。またイベントで抽出されたアンケートからは「VR体験などには500円程度の金額を支払う」という結果が導き出されている。

新型コロナウイルスによりサイエンス・フィクションの世界が現実のものとなり、その終息まで大観衆によるLIVE観戦が適わないとするならば、「新体感」の価値はむしろ向上する。

新型コロナ禍、OTTであるNetflixが約1500万人も会員を増やしている現状を考慮すれば、同じフォーマットでの視聴方法を提言しているスポーツ専門チャンネルDAZNなどを活用、「新体感」を試験導入し、視聴習慣として確立させる戦略が迫られる。

「ピンチはチャンス」ソーシャルディスタンス対策を転機に


日本一の人気コンテンツ、プロ野球とは言え、無観客試合でシーズンを通し、収益を打ち立てることは至難のわざ。シーズン途中で観客動員を図るとしても、ソーシャルディスタンス対応に迫られ、昨年までのように「満員のスタンド」とするのは無謀だ。開催試合数減少も含め、収益面での不安は拭えない中、こうしたスポーツの危機にこそ、新体感の商用実験を重ね、ビジネス検証すべきだろう。

もっとも足並みのそろわない12球団の実務者会議で導入を議論するのはナンセンス。横浜ベイスターズ、ソフトバンク・ホークスなどIT企業を親会社とするチームが、率先しその商用的価値を立証するチャンスだ。無観客試合となり、収益源不足にあえぐスポーツ界にとって、生き残りをかけた戦略となる大きな可能性を秘めている。次世代のスポーツ・ビジネスを占う上でも重要な転機となるだろう。野球の定石「ピンチはチャンス」だ。

国際オリンピック委員会、トーマス・バッハ会長が発言したように、2021年の開催を模索する東京五輪も同年開催不可能であれば、中止の憂き目が待ち受けている。感染対策として、満員のスタジアム観戦のオルタナティブに、こうした「新体感」観戦を供給し、ソーシャルディスタンス対策の上で五輪が実施されたとなれば、極めて「先進国」日本らしい革新的な大会になると、勝手ながら夢想する。そもそもスポンサー企業は、五輪でそうした近未来を提言して来たはずであり、今まさにその具現化が求められている。


連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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