バイオテック分野にスマホ到来に似た衝撃、Time BioVenturesが考える「ポストコロナの世界」

Time BioVenturesジェネラルパートナーのD.A.Wallach氏とTimothy Wright氏(Photo by Stefan Simchowitz)


注目投資テーマは「治療」「テレメディスン」


バイオテック、ヘルスケアには多くの分野がある。なかでもTime BioVenturesが注目しているのは、「治療」の分野。同分野では、細胞治療から人工臓器まで、高いポテンシャルが横たわっている。Wright氏が最も経験を積んでいる分野であり、ポートフォリオの3分の2が投資されることになるという。

治療分野の中でも、病気を非常に早期に発見できる診断法に注目し、イノベーションを促進し続ける研究開発をするスタートアップに興味を持っている。これらの研究は、DNAシーケンシングの発展をもとに、過去数十年に渡って培われたノウハウや知見が最大限活かされる領域だ。

今日の医療業界のほとんどは、病気になった人を治療することに特化している。今後は「予防医療」の世界に移行していき、病気になることが少なくなり、病気になっても重症化しにくくなることが期待される世界観を目指す。Wallach氏は次のスタートアップ事例を挙げてくれた。

「私たちが投資しているロサンゼルス拠点の会社に「Myst Therapeutics」がいます。 同社はがん治療のため、人間の免疫細胞を薬として使う新しいがん治療薬を開発しており、非常に先進的なアプローチを持っています。Mystは細胞ベースの治療法確立を目指しています。様々な臓器癌が存在していますが、 患者の寿命を劇的に延ばす可能性を秘めており、私たちが非常に興味を持っている領域で活躍するスタートアップです」(D.A. Wallach)

Wright氏は治療以外に、テレメディスン分野について語ってくれた。遠隔医療で医師と患者がスムーズにコミュニケーションを取れるようになった。同様の座組みで疾患診断をおこなえる体制作りを目指す。


Gettyimages

「テレヘルスが医療部門でより広く使われるようになってきています。同じ概念を応用した、バイオテックや製薬臨床研究、研究室のオペレーションも効率化できるサービスに注目しています。人間との接触をあまり必要としないため、メンテナンスや作業をする場合でもリスクを大幅に減らせるでしょう。

私がNovartisに勤めていた時、バーチャルでなるべく完結する臨床試験をおこなっていました。被験者には試験に参加するために必要な全てのキットが入った小さな箱が渡され、採血も被験者自身で可能。ラボへの配送もスムーズに完結されます。

今後、試験の設計にはロボットが活用され、実施方法に柔軟性を持たせる動きが出てくるのではないかと思います。新型コロナウイルスの影響で大幅に遅れている臨床試験の多くに利用できるソリューションです」(Timothy Wright)
次ページ > 未来は「パーソナライズ」

文=福家 隆

ForbesBrandVoice

人気記事