落札総額4億円超のワインオークション ナパヴァレーの成功の背景

オークションの模様


世界中からワインバイヤーやジャーナリストが集まるが、参加者の多くは全米から集まったレストラン、卸し売り、小売り店等のワインバイヤーたちだ。アメリカは、ワイン生産国としてもワイン市場としても、世界を牽引する。このイベントでは、ワインの世界でのアメリカのスケールの大きさや底力を感じた。

わずか半日で4億円超を集めた今回のオークションで、最高価格で落札されたのは、「ラッド・エステート(Rudd Estate)」のカベルネソーヴィニョンだった。オークション参加は初めてだったが、60本のロットが12万ドルで落札されるという快挙。1本当たり約2000ドルだ。


Rudd Estate’s Leslie’s Block Mt. Veeder Cabernet Sauvignon 2018

筆者はオークションの数日前に、このワイナリーのオーガニック栽培の畑を訪問し、醸造責任者から解説を聞き、美しい仕上がりのワインに感銘を受けた。


ラッド・エステート(Rudd Estate)にて

ナパのコミュニティの繋がりの強さと温かさ


これまでに数え切れないほどナパを訪問しているが、今回の滞在であらためて感じたのはナパのコミュニティの繋がりの強さと温かさだ。

ナパのワイン産地は、知名度が高く存在感も大きいが、地理的には決して広いものではなく、ワインの生産量としてもカリフォルニア全体の4%を占める程度。ワイナリーの95%が今でも家族経営であり、生産者同士の繋がりも世代にわたって親密で、家族ぐるみの付き合いだと多くの生産者が口を揃える。その結束力の強さが、「プルミエ・ナパ・ヴァレー」の成功要因の一つなのだろう。

ナパヴァレー・ヴィントナーズは、毎年6月にも、一般の参加者向けに「オークション・ナパヴァレー」を開催している。このオークションで集められた資金は、ナパの地元コミュニティのために使用される。2020年6月のオークションは、新型コロナウイルスの影響を受け中止が決まっているが、同団体は、地元地域に対する多額の寄付は引き続き行うと発表している。地元への貢献に限らず、2011年には、東京で東日本大震災のチャリティ・オークションを開催し、その収益をすべて東北復興の義援金として寄付した。

コロナ禍は、世界のワイン業界にも多大な影響を与えている。いちワインラバーとしては、これまで以上にワインを楽しみ、ワインに秘められたストーリーを伝えることでサポートし続けたいと思う。


世界中から集まったワイン関係者のグループ(イングルヌックのワイナリーにて)

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文・写真=島 悠里

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