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2020.05.31 11:00

「攻撃的で、生意気」オラクル創業者の半生、そして新会社「センセイ」 | ラリー・エリソン(後編)


コロナ前の世界には戻らない


ラナイ島への行き方は2つ。マウイ島から1時間フェリーに乗るか、ハワイのほかの島々から小型機で飛ぶかだ。マネレ港とラナイ空港を含む島域の2%は、エリソンの所有には属していない。食品や生活必需品を島内に運び込む港や、それらを運ぶ荷船、3000人の島民が住む家などもまた同様だ。

それらを除いた約365㎢の島域は、波に洗われる断崖も、島民がオフロード・ドライブや狩りに出かける赤土の景観も、プランテーション・スタイルの町の広場につながる公道沿いのクックパインの木々も、すべてエリソンのものである。

彼がラナイ島を購入して以来、ここは健康と持続可能性の実験場となった。すべての活動を下支えしているのが、データ収集とフィードバックのループだ。「先進技術の実験室に少し似ているね」と、エリソンは言う。

彼は18年に親しい友人だったエイガスとセンセイ社を共同創業し、この島で3つの複雑な課題に取り組んでいる。すなわち世界的な食料供給網、栄養、そして化石燃料から持続可能なエネルギー源に移行することである。センセイはこれまでのところ、1泊3000ドルのスパ「センセイ・リトリート」と、ソーラーパワーを使って水耕栽培を行う温室「センセイ・ファームズ」を立ち上げている。人工呼吸器の不足や失業率の急増が叫ばれている現下の状況に、どちらもひどく時代錯誤的に思えるが、肝心なのは両者を下支えするデータに目を向けることだ。

「センセイ・リトリート」(昨年12月に開設されたが、現在はコロナ禍のために一時閉鎖中)に到着したゲスト(アリアナ・ハフィントンらも早々に利用した)は、滞在中の精神面や身体面の目標を設定するために「個人評価クイズ」を与えられる。それ以降は豪華スパのスタッフが、ゲストの睡眠の質や栄養状態、血流などをモニターする。

一方、隣接する「センセイ・ファームズ」は2棟の温室を稼働させており、今後、さらに4棟を増やす予定だ。1棟の面積は約1860㎡と、一般的な農場よりもかなり狭い。温室に備え付けのセンサーとカメラが、水の使用量や気流の速度などのデータを集め、それぞれの作物にとっての最適環境を導き出す。この温室は水の使用量が通常の農法よりも90%少なくなる予定で、必要な電力はエリソンが役員を務めるテスラ社製の1600枚のソーラーパネルから得る。その管理された環境は世界中で再現できるものと、エリソンは期待する。
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文=アンゲル・オウ・ユアン 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫 編集=岩坪文子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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