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2020.06.23

アウトドア業界の下町ロケット。町工場発の「SOTO」の炎が世界に認められるワケ


思わぬ形でのポケトーチのヒットから2年。新富士バーナーは新ブランド「SOTO」を設立し、満を持してアウトドア業界への参入を果たした。

自らの目指すべき方向性として意識したのは、欧米ブランドとの差別化と徹底した実用性の追求だった。MADE IN JAPANの強み、そして燃焼器具専門メーカーとして培った知識と技術を活かしたもの作りだ。

ロングセラー商品「レギュレーターST-310」を例にとると、SOTOの製品への取り組みが分かりやすいだろう。


2008年の登場以来、現在も売れ続けるロングセラー「レギュレーターST-310」。

まず、燃料は日本中で手に入り、経済的なカセットガス(CB缶)を採用した。しかし、CB缶は外気温が低い環境ではボンベ内の圧力が低下し、火力が落ちやすい。

この弱点を克服するために、「レギュレーター」なる機構を組み込むことにした。これは、ボンベ内の圧力変化に左右されることなく、常に一定のガス量を出力できる調整圧機である。

しかし、従来のものでは大きなものになってしまう。アウトドアでの使用を考慮すると、堅牢性に加えて、コンパクト性も必要不可欠。そこでレギュレーターを小型化してバーナー本体へと組み込むための研究が繰り返された。


工場がある場所は、海沿いの工業用地の一角。実際に足を運ぶと「え? ここで?」という意外な場所で製品が作られている。

このような積み重ねの結果、燃料が手に入りやすく、寒さに強い、しかも軽量かつコンパクトに収納できるストーブが生まれたのである。

同様に、着想から開発、製品化に至るまで、どの新製品も数年単位で根気強くトライ&エラーが繰り返されているというのだから頭が下がる。

青い炎と日本で作ることへのこだわり



美しい青い炎にこそ、バーナーブランドとしてのプライドが詰まっている。

SOTOは燃焼器具を扱うブランドとして、“炎の色”にも徹底的にこだわる。

炎といえば赤やオレンジ、を想像しがちだが、完全燃焼した高温の炎は美しい青い色になる。つまり、赤みがない青い炎こそが、高品質なバーナーの証なのだ。


現在も、製品は豊川市内の自社工場で手作業で組み上げられている。

また、自社工場で製品を作ることにもこだわりをみせる。

ほとんどの部品は自社工場内で作られ、組み立ては1台1台を手作業で進められる。しかも抜き取りではなく、すべての製品の検査も丁寧に行っているのだ。

これは、1万台にひとつの不良品も絶対に出してはいけないという、SOTOの製品に対する妥協を許さない姿勢の現れなのだ。


バーナーは完成品はもちろん、組み立て途中にも1台ずつガス漏れがないかなど、さまざまな検査を行ってから出荷される。
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取材・文=池田 圭 写真=矢島慎一

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