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Foster Huntington, wonderfulengineering

(以下、写真は英国のサイト「wonderfulengineering」からの許諾を得て転載する)

フォスター・ハンティントンはかつて、ラルフ ローレンのデザイナーとしてニューヨークで目まぐるしく働き、着々とキャリアを築く暮らしをしていた。英語圏での5大出版社のひとつ、ハーパーコリンズで働いていたこともある。まさに“成功したニューヨーカー”の代名詞のような男だったのだ。

その彼は今、ニューヨークの家を捨て、なんとワシントン州南西部の「木の上」で暮らしている。2本の大樹の上に建ったその2つのツリーハウスは、スイングロープでつながれている。

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Foster Huntington, wonderfulengineering

ハンティントンがニューヨークの暮らしに突如見切りをつけ、暮らしに「必要最小限なモノ」だけをVAN(箱型自動車、キャンピングカー)に詰め込んで旅に出たのは2011年のことだ。インターネット上でバズを起こしたあの「VAN LIFE」の始まりである。ハンティントンはキャンピングカーでの日常を記録した「A Restless Transplant」(直訳すれば「絶えざる移動」)を開設。道中で出会ったキャンパー仲間を記録していく。

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Foster Huntington, wonderfulengineering

さらには「van-life.net」を開設、インスタでもハッシュタグ「#vanlife」で写真を投稿し始めると、コミュニティーが形成されるまでに時間はかからなかった。「最低限のモノで、最高の豊かさ」を求めるキャンパーたちとの双方向発信が始まり、さらに、そんな暮らしに焦がれる都市定住者たちがむさぼるように彼らの日々を閲覧し出したのだ。

ハンティントンは「VAN LIFE」を記録した写真集『HOME IS WHERE YOU PARK IT(ヴァンを停めたところ、そこがわが家)』の出版資金をクラウドファンディングで募ったところ瞬く間に成立。本書は再版もされ、現在でもアマゾンなどで販売されている。

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Foster Huntington, wonderfulengineering

なおハンティントンは「家が火事になった時に持ち出すもの」を一般に募って、theburninghouse.comというサイトも開設した。

「本当の自分が試される質問は何か、と考えた時、この問いに辿りついた。誰もがまずは、『実際に必要なもの』と『思い出や感傷』との間で悩むだろうけど、迷って選んで切り捨てていくうち必ず、自分自身が浮き彫りになってくるんだ」

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Foster Huntington, wonderfulengineering

さて、そんなにも愛した「VAN LIFE」を捨てて彼が選んだ「定住」の地が、ここ、ワシントン州南西部の木の上。写真集の売上げなどをかき集め、大工でありデザイナーでもある大学時代の親友に声をかけて、ともにこの「ツリーハウスプロジェクト」に着手し、そして晴れての実現にこぎつけた。

「とにかくツリーハウスを建てたかった。子どもの頃からの夢だったから、叶えなくちゃね」

──たとえ住む場所が「動かなく」なっても変わらないのは、自らの愛する哲学に沿った暮らし、すなわち「火事になった時に持ち出す私物たち」だけとのミニマルな日常なのだ。

文=石井節子

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