「宇宙飛行士はテスラで移動」スペースX打ち上げの舞台裏

photo by Official SpaceX Photos

スペースXとNASAは、歴史的ミッションとして期待された2人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げを、悪天候により発射直前の15分前になって延期した。

今回のミッションはDemo-2と呼ばれるもので、5月27日午後にクルードラゴンが国際宇宙ステーション(ISS)へ向けて飛び立つはずだった。フロリダ州のケネディ宇宙センターで予定された打ち上げは、民間企業による有人宇宙飛行としては史上初で、米国内からの飛行士打ち上げとしては9年ぶりとなるはずだった。

しかし、当日は悪天候が続き一時的に竜巻警報が出されるほどであり、直前になって中止が決まった。NASAの宇宙飛行士、ロバート・ベンケンとダグラス・ハーリーを乗せたクルードラゴンの2回目の打ち上げは、5月30日に延期された。

仮に2回目の打ち上げもキャンセルになった場合は、5月31日に3回目が予定されている。

ISSに向かう宇宙船の打ち上げは、ISSが頭上を通り過ぎた直後の一瞬を狙う必要があり、そのタイミングは非常に厳密に管理する必要がある。予定時刻きっかりに打ち上げられなかった場合、次のタイミングを待たねばならないのだ。

27日の打ち上げの準備は、最終段階まで順調に進んでいた。スペースXの未来的なデザインの宇宙スーツに身を包んだ宇宙飛行士らは、テスラの車両に乗って発射台に向かった。その後、クルードラゴン船内で計器類のチェックなどを行い、出発の時を待っていた。

NASAは、過去10年に渡って宇宙飛行士を低軌道まで商用輸送するプロジェクトに取り組んできた。2010年にオバマ政権下でスタートした「商業乗員輸送開発(Commercial Crew Development)」プログラムでは、スペースXの他にボーイングがNASAから出資を受けている。

スペースXはこの任務の遂行に向けて、NASAから26億ドル(約2800億円)を調達しクルードラゴンの開発を進めてきた。一方で、ボーイングは42億ドルを調達し、来年の有人打ち上げを目指す宇宙船「スターリンク」の開発を行ってきた。

イーロン・マスクは2002年にスペースXを設立して以来、18年間に渡って有人宇宙飛行を目指してきたが、その夢が現実になるまであともう少しだ。

編集=上田裕資

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