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川村雄介の飛耳長目

昔の人は偉かったなあ、と改めて思う。昨今その重要性が叫ばれているリベラルアーツ教育である。その淵源については諸説あるが、ギリシャ時代に遡るらしい。自由人として生きていくために必要な自由七科、文法・修辞・論理・算術・幾何・天文・楽理、が大本だという。

これらを修めることで、自由な発想を涵養できると考えた古代の人たちはさすがである。単なる知識の集積ではなく、自由人として生きる技術、artes liberalesを磨くことが教養人とされた。

興味深いことに自由七科の過半が実質的に「理系」科目。入浴中に浮力の原理に思い当たり、幾何算術の極意のようなアクロポリスを建設できたわけだ。

理系学問では古代アジアも負けてはいない。ゼロを発見したのはインドであるし、中国の陰陽道は元始、科学だったといわれている。

風水とか陰陽というと非科学的な占いのように見られがちだが、本来は干支の60の組み合わせを基本にして、方位、時間、宇宙の運行、天候などによる範囲設定を施したうえ、さまざまな変数を入れて予測値を求める統計・確率論だったそうだ。

存命なら100歳を超える九州人で風水の達人がいた。政治家や経営者の危機を見事に当てる。その秘訣を聞くと「長年の必死の勉強しかない。計算し過ぎで円形脱毛症になったよ」。山と積まれた文献に囲まれた彼の説明は、何かに似ていた。当時、一世を風靡したモンテカルロ・シミュレーションであった。

東京大学のルーツは朱子学中心の昌平黌(しょうへいこう)だとされるが、実はもっと遡れる。17世紀初頭に設けられた天文方である。文字通り、暦の編纂が主業務だったが、徐々に地理学や光学も扱うようになったという。だから、東大のルーツは理系だったともいえる。

そのためか、最近の東大は理系総長の下で、研究のみならずベンチャー育成でも気を吐いている。これまでのベンチャー企業創出数は300社に迫り、その中の11社が上場を果たしている。大学発ベンチャー数では国内ダントツだ。

地方国立大学でもエッジのきいた大学のトップには理系出身が多い。大胆な改革で実績を上げた長崎大学の片峰茂元学長も、プリオン研究の権威だ。

文=川村雄介

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