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川村雄介の飛耳長目


どうして今の時代に理系が目立つのか。東大の理系の泰斗が漏らす。

「文系の専門家は枠組みの中で、調和の法則を見つけようとする傾向が強いのではないか」。

法律などが典型的だろう。法解釈で条文を逸脱した立法論を持ち出されたら大変なことになる。世の秩序も法定手続きもなくなって、人権など吹き飛んでしまう。官僚や大企業の管理部門に法学部出身者が多いのもうなずける。

「理系はできないことをやろう、誰もやったことがない発見や技術開発をしたいと考えます。枠組みにとらわれず、常にナゼ? の連続なんです」。某先端技術研究所長の言だ。

文系人間の私から見ると、典型的な理系人間には「変なやつ」が少なくない。知人でも、炎天下、一日中しゃがんでアリの群れをじっと見続けて病院に運び込まれた幼児やテレビとカメラを分解してレーザー光線銃を作ろうとして警察に通報された少年が、いまや世界的な研究成果を上げている。最先端の理系人間は優れた芸術家に似ていると思う。どちらも既成概念にはまらない。

成長戦略待ったなしの日本には、こうしたクリエーター的資質をもつ人材が重要であり、理系的発想が求められているのだろう。ピーター・ティールが指摘する0 to 1である。自由で高度で競争的、そして資金の潤沢な理系研究環境の整備が急務である。

では、理系だけで研究の実をあげられるのか。そうではない。洗練された制度インフラと行政、人事総務のスキル、何よりも社会的存在としての人間たちに、不公平感のない価値の分配を実現していく能力が不可欠だ。いわば1 to 10であり、文系の得意分野だと思う。

要するに、理系も文系も両方必要。従って、若い頃には、数学も国語も理科も社会も勉強しなければならない。高校一年生から「私立文系」志望に徹して数学や理科と縁を切るなど論外だし、物理オタクだから古典文学など見向きもしないのでは困る。ゆえに、どちらにとっても絶対に必要なものが、リベラルアーツなのだ。

ちょうど10年前である。スティーブ・ジョブズは喝破した。

”We’ve always tried to be at the intersection of technology and liberal arts.”

この発想が生み出したもの。それはiPadと呼ばれた。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、2000年に長崎大学経済学部教授に。現在は大和総研特別理事、日本証券業協会特別顧問。また、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

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