手軽に新たなノーマを体験してもらうため、予約制をやめ、テイクアウトも可能にした。「いままでやってこなかった新たな領域だ」とレゼピは言う。コロナの影響で休業する前のノーマは、世界の美食家が半年前から予約を取り、はるばるコペンハーゲンまで足を運び、ようやく店で料理を楽しむことができるというとても特別なレストランだった。
このワインバーは、コペンハーゲンに住む地元の住民たちでも気軽に訪れることのできる場所をめざして考えられた新業態。これまでのレストランが営業再開した後も、少なくともこの夏の終わりまでは営業を続ける見込みだそうだ。
「ちょっとワイン一杯のみにノーマに行こう。そんなスタイルがノーマの未来の姿の1つかもしれない」とレゼピは言う。
自分たちのローカル・スポットを
現在のノーマは、2018年2月に「ノーマ2.0」として新たに開店した場所にある(以前の「ノーマ」は2017年2月に閉店)。ヒッピーやクリエイターたちが集う「自治区」として知られるクリスチャニア地区の北端にあり、水辺の空き倉庫がレストランの拠点で、周囲は農園だ。その美しい空間に新たにできた野外の「ワインガーデン」は、写真を見ただけでも間違いなく魅力的だ。
デンマークの国外にいる人間からすれば、ある意味とても羨ましい空間であり、「ノーマ・バーガー」を食べてみたいという欲求も相まって、ぜひ訪れたいという気分にもなる。しかし、このノーマのワインバーが注目され、人気になりすぎて、何時間も列に並んで待たなくてはいけない場所になるのは、レゼピの最初の構想とは乖離してくるだろう。
国境封鎖などで、気軽に世界を旅することが難しい状況にあるからこそ、いまそれぞれ自分たちの場所で、ノーマのワインバーのような居心地のよいローカル・スポットに目を向けるべきなのかもしれない。
オープン初日の様子
ノーマがレストランとしての名声を築くだけでなく、地産地消やオーガニックといった食にまつわる新しいライフスタイルを世界に広めていったように、このワインバーも、地元のコミュニティや人々を最優先するという、ポストコロナの新しい空間と食の楽しみを示唆している。
連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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