大学生時代にコーヒーショップでアルバイトをしたことをきっかけに、コーヒーの魅力に取り憑かれた川野氏。コーヒーをめぐる旅に出るため海を渡り、帰国後にLIGHT UP COFFEEを創業した。まるで“フルーツにかじりついたようにフレッシュ”な一杯を求め、店舗には客足が絶えない。
純粋無垢にコーヒーの美味しさを追求し続けてきた彼は、店舗ビジネスの次なる一手として、コーヒーの福利厚生サービス「WORC」を立ち上げた。お店でバリスタがつくる味をそのままに、 淹れたてのコーヒーがオフィスに毎日ポットで届く。「オフィスで本格コーヒーが楽しめる」との噂は瞬く間に広がり、早速導入を決めた企業も多い。
「特別な特許」や「先端技術」ではなく、「美味しいコーヒー」という武器を提げスタートアップシーンに参戦した、一人のアントレプレナーの背中を追った。
“衝撃の一杯”に導かれ、コーヒーショップを創業
“コーヒーのスタートアップ”として船を漕ぎ出す「WORC」の話をする前に、川野氏の原点となるLIGHT UP COFEEの創業秘話まで時計の針を戻す。
川野は大学生時代に、とあるカフェチェーンでアルバイトをした経験から、コーヒーに“どハマり”した過去を持つ。「規則の範囲内であれば、なんでも自由にやらせてくれる」環境をフル活用し、本来メニューにないラテアートを提供していたそうだ。
「せっかく働くなら、お客さんに喜ばれることをしたかった。そこで、ラテアートに挑戦してみたんです。一度ハマると熱中してしまう性分なので、Youtubeで動画を見て練習しているうちに、ラテアートの全国大会で優勝するまでになってしまいました(笑)。必然的に、コーヒーにも興味を持つようになりましたね」
ラテアートへの熱中に端を発するコーヒーへのあくなき好奇心は、川野氏を海外まで連れ出すことになる。趣味として行なっていたカフェ巡りで、当時日本にオープンしたばかりの「FUGLEN TOKYO」や「ONIBUS COFFEE」に足を運び、その味に衝撃を受けた。
「それまでは「苦い飲み物」と思っていたコーヒーから、フルーティーなベリーの味がしたんです。「FUGLEN TOKYO」で飲んだブラックコーヒーの味は、レモンティーにさえ感じられましたね。その衝撃が忘れられず、バリスタの世界チャンピオンが暮らすオスロを目的地の一つに、北欧のコーヒーショップを巡る旅に出ました」
夏休みの長期休暇を利用した、40日間の旅路。格安航空券を押さえ、8ヶ国をまわった。「体に浸透するほど、コーヒーを飲みました」——川野はこの旅行をきっかけに、コーヒーを自分の仕事にすると心に決めたそうだ。
「美味しいコーヒーを、もっと日本人に知ってもらいたい」。2014年7月、吉祥寺は中道通り沿いに、大学3年生で「LIGHT UP COFFEE」第一号店をオープンした。